滝和也

クロッシングの滝和也のレビュー・感想・評価

クロッシング(2009年製作の映画)
3.5
より善になるか、
より悪になるか…。

犯罪都市ニューヨーク。
3人の警察官達が
向かう先はどこに
あるのか…。

「クロッシング」

リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ジョン・チードルの三大スターを迎えたアントワン・フークワ監督の重厚なクライム・サスペンス。

これまで無理をせず、事件に首を突っ込まず、勤め上げて来た孤独な定年前のパトロール警官にリチャード・ギア。

病気の妻のため、子供達のため、金が必要で遮二無に麻薬犯罪を追い、射殺も辞さない刑事にイーサン・ホーク。

自ら進んで、アンダーカバー(潜入捜査官)となったが、妻に逃げられ、恩人だったギャングのボスをハメなければならなくなった刑事にドン・チードル。

3人のそれぞれの行動が次々と描写されながら、過酷すぎる犯罪都市ニューヨーク、そこでもがき苦しむ警官たちの悲哀を描き出す。誰もが犯罪者に落ちざる得ない苛烈すぎる状況であり、人の道を踏み外して行くが…という展開。

クロッシングの邦題はあながち間違いではないが、3人が共闘するわけではなく、運命が彼らを導く程度なので、共演とまでもいかない。この時代に流行ったトラフィックの様な形式と思って見たほうが肩透かしにはならない。

三者三様だが、かなり重たい内容で重厚な作りだが、正に重厚長大の言葉の様にやや長く感じてしまったのは、テンポがあまり良くないためか。全くバラバラに進むため、編集も難しいためか。オープニングのイーサン・ホークの強烈さにかなり期待したのだが…。

三者三様のストーリーを2時間強でまとめるため、ややキャラのバックボーンが弱い。ギアやチードルはその煽りを食った形。ギアはなぜ無気力なのか、いつからなのか、家族は?と言う部分。チードルはギャングのボスに入れ込む背景とやや説明不足。年齢からか、ギアには少し共感できる部分があったのだが…。

またかなりリアルに進んでいたストーリーを無理に集結させている感があり、また集約されるべき、ラストもやや中途半端さを感じざる得ない。特にドン・チードルは気の毒だ…。

それぞれの話は悲劇であり、リアルかつ心情をそれなりに描けているし、アクション部分になるとそれなりの迫力やスピード感もある。やはりアントワン・フークワにはこの手法はあまり似合わない気がする。王道的なストーリーに一つ一つ拘りを入れて丁寧に作り上げる作品が似合う。マグニフィセント7やイコライザー、エンドオブホワイトハウスの様に。映像作家と言うより拘りの職人なのだ。

追記…ギャングのボスにウェズリー・スナイプスが出演。往年のニュー・ジャック・シティが偲ばれ、懐かしさを感じました…(^^)
滝和也

滝和也