真鍋新一

野獣狩りの真鍋新一のレビュー・感想・評価

野獣狩り(1973年製作の映画)
3.3
早々に事件の犯人たちの居所が観客だけに明かされてしまうのでサスペンス的にはちょっともどかしいところがあるのだけど、殺伐とし始めていた社会のムードを交えながら進んでいく画面からは目が離せない。

おそらくはほとんどゲリラ撮影。木村大作の見事な撮影で1973年の銀座、池袋周辺とそこを歩く一般人の服装が克明に記録されていて、銀座通りの歩行者天国での追跡シーンはどこを見て良いやら忙しくなる。

撮影とライティングがすばらしいのか、伴淳三郎や稲葉義男といった、もはや日本映画史の人という感のある名優が、いま生きている俳優のように生き生きとフィルムに刻まれているのも実は大きな見どころ。

藤岡弘の燃えるような目力の強さはやはりすごい。先日解体された日比谷のニュー東宝ビルの上で彼が見せるスタントなしの壁つたい、落ちたら死ぬ。

村井邦彦の音楽はちょうど同時期の勝プロ作品でも聴かれるニューソウル風。洋画の影響を受けてかなり凝るようになったガンエフェクトと画面の構図のキマり具合とも相まって、50年近く経っても風化しない新鮮さがある。
真鍋新一

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