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311のAirconのレビュー・感想・評価

311(2011年製作の映画)
3.6
みんな家族が死んでて、遺体を探している、という状況。

不謹慎だとか言われているけど、人間は観たもの経験したことでしか考えられない。
「経験したもの」「観たもの」「読んだもの」「知らないもの」の間にはいろいろな違いがあるけど、人がなにかを考えるということはそういうことと密接に結びついている。
メリットとしては、このようなミクロの悲しんでいる存在を映すことで、その存在のことをより深く理解できるのかもしれない。
「なんか家族が死んだ人がいっぱいいる、らしい」程度の理解よりも。

少なくとも自分はこのようなミクロの深い悲しみにフォーカスしてくれたことで、観る前の理解がより漠然としていたことがよくわかる。
自分はそういう人たちの存在をどれだけ意識できるか、そういう人たちと接したときにその人を傷つけてしまわないか、これを観たか観ていないかでは違いが出てくる。
被災者ではないが日本人である自分は当事者意識があるし、他人ごとだとは思えない。


目を背けたいのに直面させるようなことを聞くな、というのもわかる。
もちろん無理に聞きだすのは良くない。
負担があるのは確か。
その負担が最低限であるように、当事者が”話す”と”話さない”の間で、話すことを選ぶか、そこをしっかりと意識していたように自分は思えたので、ある程度は配慮をしたインタビューだったと思う。

もちろん”聞く”という時点での加害性はゼロにはできない。
「聞いていいですか」と聞いても、それで「いいですよ」と言っても、負担はある。
負担がゼロではないことと、上に書いたような(それ以外でも)報道の必要性というものがせめぎ合っていて、ジャーナリスト個々人でそこの答えを出して、それに対しての批判もある、という感じ。
そりゃ何も聞かないほうが負担は少ない。
撮りに行くだけでも迷惑だし、負担はある。
「負担をゼロにする=報道しない」が正しいとは思えない。
じゃあどこまでか、という話。
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