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311のtetsuのレビュー・感想・評価

311(2011年製作の映画)
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ふと気になって観た。

ドキュメンタリー監督である森達也を含めた4人の男たち。
3.11後の被災地を記録したドキュメンタリー。

これまでの監督作品でも感じていた「ドキュメンタリーの加虐性」が、良くも悪くも顕著に表れていた例だと思う。

そもそも「ドキュメンタリー」撮影という行為は、「対象」と「作り手」という2つの関係で成り立っており、編集などによって事実を選択できる「作り手」は「対象」より優位に立つことになる。

とりわけ、森監督の代表作のひとつ『FAKE』では、その上下関係を活かすことで、信用できない「対象」をエンターテインメント化していたようにも思うが、それは、ある種、危険を孕む行為のようにも感じていた。

そこで観たのが本作であったが、映し出されていたのは「作り手」であるジャーナリストの事実を伝えようとする「信念」と「狂気」だった。

本作の製作陣は、たとえ誰かを傷つけたとしても、真実を伝えること、記録を残すことに重きを置いている。

その部分は受け手によって賛否もあると思うが、「作り手」の「醜悪な部分」も含めて、あえて残したことには価値があったと思う。

また、あの日の自分を振り返ると、テレビ画面に写される現状に対して、心のどこかで見て見ぬふりをしようとしていた部分も少なからずあったため、目を逸らさずに記録を残そうとする本作の姿勢には敬服するところもあった。

真実を伝えることと、人を傷つけること。
この衝突は近年の「週刊文春」における芸能人の過剰な報道などにも感じられることで、社会が必要以上に彼らを責め立てることで、無意識に自分自身も人の心を傷つけることに「加担」している意識があった。
そんなことを改めて考えさせられたし、少なくとも身近な問題には、しっかりと向き合えるようになりたいと思った。

実際に記録された映像だからこそ、都合良く作られてしまいがちなフィクションから得られないリアルがあった本作。
そこから得られる感覚は、実際に現場を訪れることの数分の一にも満たないかもしれないし、正直なところ、嫌悪感を抱かせる部分もあるため、当事者の方々には観てほしくない作品ではあったが、ドキュメンタリーとして残す価値はある作品だと思った。

参考
『童貞。をプロデュース』の性行為強要問題で映画監督の森達也氏が松江哲明氏を擁護し、被害者の加賀賢三氏を批判する - Togetter
https://togetter.com/li/1459378
(この発言をした意図も分からなくもないけれど、容易に賛同はできない。)
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