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居酒屋兆治のtjZeroのレビュー・感想・評価

居酒屋兆治(1983年製作の映画)
4.0
脱サラして函館で居酒屋を営む男の元に、かつて愛した訳ありの女が訪ねてくる…。

…なんて、思いっきり演歌の世界だが、本作は上質の演歌である。
いい歌とか演奏って、いつまでも聴いていたくなるものだけど、この映画もすぐれた演者(高倉健、田中邦衛、大原麗子、大滝秀治…などなど)のいい演技を長回しでじっくりと堪能させてくれる。
それでいて、主人公の過去を描く回想シーンなんかは効率よくサラッと処理していたりして、作品自体のメリハリが良い、好演出(降旗康男)。

メインの男女の悲恋話の他に、酒場を訪れるいろんな人々のエピソードも出てくるけど、それらが単品のおつまみのように彩りを添えている…まるでこの映画自体がなじみの赤ちょうちんのような居心地のよさ。
サントリーの社員から作家に転身した山口瞳氏による原作らしく、酒への愛情や、酒をめぐる人間模様をさりげなくも濃密に描いた酔い心地のいい作品。
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