こたつむり

殺意の香りのこたつむりのレビュー・感想・評価

殺意の香り(1983年製作の映画)
3.1
♪ 二度と振り向く事は出来ない
  あまく危険な 愛の香りよ

ファム・ファタール。
それは「運命の女」。
でも、最近では「魔性の女」の方がポピュラーみたいです。確かに“弄ばれちゃう”感が強いですよね。

そして、本作はその語感が似合う物語。
主人公はとても真面目なセラピスト。とある女性の奇妙なお願いをきっかけに、殺人事件に巻き込まれていく…という展開なんですが、80年代っぽいベタリとした筆致。

これがなかなか乙なんです。
死体が車の中で発見される場面なんて、思わず「ドギャーンッ!」という擬音が聴こえてきそうな感じ。そう。荒木飛呂彦先生の作品に通じる筆致なんです。

また、被害者の見た夢を分析した場面も同様。
少女がクマのぬいぐるみを“傷つける”瞬間に、どこかインモラル的な感覚を抱いたのは…それでいてエロティックに感じないのは…やっぱり、某奇妙な漫画と似ているんです。

だからねえ。
個人的には諸手を挙げて「面白いよ」と言いたいところなんですけどねえ。

唯一の難点であり、大きな瑕疵。
それが物語の印象を損ねていました。

それは、配役。
本作で最も重要なファム・ファタールを演じたのがメリル・ストリープなんですけど、若かりし頃は『クレイマー、クレイマー』のお母さん。年老いたら『プラダの悪魔』の編集長…とバリキャリなイメージが強く。危うい雰囲気で男を惑わす感じじゃないんです。

やっぱり、魔性の女は雰囲気が大切。
男の自尊心をくすぐるような“弱さ”が表に出てこないとダメなんです…ってこんな発言、今の世の中だとセクハラになっちゃうのかな。でも、男の庇護欲って本能だと思いますよ。

まあ、そんなわけで。
頑張って雰囲気を盛り上げているけど何かが足りない作品。一応、メリル・ストリープのセミヌードもあるんですけどね。母親の裸を見たような気分になった時点で…僕とは相性が悪かったんでしょうね。残念。
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