Aircon

風が吹くままのAirconのレビュー・感想・評価

風が吹くまま(1999年製作の映画)
3.7
「生と死、善と悪」

あらすじ読まない方がいいと思う。
キアロスタミ氏、毎回観客が何も知らないことを前提に、情報の出し方の順番を考えている感ある。
今回も序盤なんの目的なのかわからないまま進む。
その謎も含めて。


生と死も含め、流れているこの村の時間に観測者としてポンと放り込まれたズレているテヘランの人間。
亀とか糞転がしの時間感覚。
彼らの時間感覚に苛立ち亀に嫌がらせをしてみたり、子供に当たったりする。

本当は人間は「風が吹くまま」と同じように生まれて死ぬだけなんだけろうけど、現代人の感覚はかなり風が吹く以上の感覚にはなっているな。
ある視点から見れば人間の生も死も、風で舞う砂埃とたいして変わらないんだけど、いつのまにかこのスパンの中で欲張りになっていく。
本来の感覚として近いと思うのは、人間がセミみたいに一夏くらいで死ぬという感じだと思う。

別の言い方をすると意味がないということになるのかもしれない。
”たいして”意味がない。
自分が生まれて死ぬ事に意味がないという当たり前の現実を、どうやって捉えれば良いのか。
”たいして”をどう捉えるか。
現代はめっちゃ意味があるって言ってるからみんなキツいんだと思う。
普通に考えれば意味なんてないのに。


なんとなく流れている時間が違う。
ファンタジーなら、この町ごと死後の世界で、目が覚めると生死の境を彷徨っていた、くらいの、そこまではいかないけど、そういうタイプの迷い込んでしまった感があるほどの違いがあって面白かった。
たぶん前時代にタイムスリップしたらこういう感覚を味わうんだろうな。
Aircon

Aircon