レオピン

深く静かに潜航せよのレオピンのレビュー・感想・評価

深く静かに潜航せよ(1958年製作の映画)
4.2
【アンラッキー7】

1943年、真珠湾攻撃から約1年あまり。
日本海域の近く「豊後水道」では、偵察中の米海軍の潜水艦が駆逐艦アキカゼによって次々に沈められていた。周囲の第7海域の名は海兵たちに忌み嫌われていた。

数ある潜水艦映画に影響を与えた名作。かわぐちかいじ先生「沈黙の艦隊」のネタも詰まっているね。
乗組員に本当の目的を告げぬまま出航する艦
潜水艦同士の戦い 上下の位置で機関停止 物音一つ立てられないだるまさんが転んだ状態での心理戦 囮<デコイ>船へ魚雷攻撃 

アキカゼを仕留めた後、謎の信号音を聞いた重傷の艦長がベッドから起き上がり「潜れ」と叫ぶシーンはホワイトベースのパオロ艦長を思い出させる。「通常の三倍のスピードで~」「に逃げろ!」これは富野御大完全にイタダいてますね。宇宙葬もあったしの。

船を沈められた復讐に燃えるリチャードソン中佐(ゲーブル)。自分が指揮を執るはずだった艦を上官の横車でとられてしまったブレッドソー大尉(ランカスター)。二人が感情的対立を乗り越えて敵を倒す。

出航してしばらくの間、潜航と同時に魚雷発射する訓練を繰り返す。深度50フィート(約15メートル)、海面スレスレですぐ発射。だが訓練目的を知らされていないのでみな半ば疑問。輸送船団をあえて逃がしたりするのを見ていよいよ不信感が高まる。

第7海域かぁ でも豊後水道は避けるってこったし ま模擬なんでしょ
敵を欺くにはまず味方から 内心を兵に気取られてはならない

爆雷が命中し沈んだと思わせる為に乗員の死体を魚雷口から海に放出するよう命じるとき、アンタそこまでやるのかと射るような視線が艦長へ向けられる。だが瞬時にその苦痛は共有される。みんなの顔が雄弁に語る。すまん。ソナーマンの表情がまたいい。

日本軍は漁船に近海のゴミを拾わせていた。その事を東京ローズのラジオ放送から知る大尉。
敵の情報収集能力を逆手にとり攻勢に出るチャンスだということに気がつく。
そしてこれまでの戦法どおりアキカゼを討つ。だがその直後真の強敵が待ち受けていた。。

人を動かすのに全てを語る必要などない。新任のポストにつく時の心構えとして観るべし。軍人としてはどうかと思うがこっちの方が萌えるもんね

偉いのは乗員たちだ。突然の方針転換にも決まったら不平一つ言わずについていく。これは潜水艦という超極狭空間で数週間も過ごす特殊環境からもくるんだろう。互いに命を預けあった運命共同体だからこその一体感。団結が命。

警報が鳴って配置に着くとき、みんなお守りのピンナップガールのお尻にタッチして出ていく。生か死か 戦いが終わるまで誰にも分からない。このホモソーシャル感、いや艦。

画面におさまる人数がまたちょうどいい密ぐあいで、まるで東映やくざ映画。淀長さんはじめ名だたる映画評論家が好きだった理由が分かる。 
ムンとした男たちの熱気 ねっとりとした視線 これはたまらんよなぁ・・・

言うなっ!

⇒峯風型駆逐艦「秋風」 竣工1921年4月1日 乗員154名
⇒ナーカ号(Nerka)のモデル:バラオ級レッドフィッシュ 乗員60名程度

⇒豊後水道:連合艦隊の停泊地である呉。瀬戸内海から太平洋へ抜けていく艦船はこの豊後水道を通っていく。国防上の要衝。
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