Kamiyo

ドライヴのKamiyoのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
4.4
2011年”ドライヴ”
監督 ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本 ホセイン・アミニ
原作 ジェームズ・サリス

僕の「傑作」か否かを決める基準に、「数ヶ月後も鮮明に思い出せるか」という基準がある。
良い作品だと思っていても、数日後に中身を忘れるようではその作品は大したことがないと僕は判断する。
そしてこの作品、10年程前に観た。再見です

大人しいヤサ男と見せかけ、無表情の中の微妙な動きで芯を滲ます。何を考えているのかわからない、ミステリアスな男。そんなライアン・ゴズリングのイメージにぴったりな本作。徹底して無駄の削がれた描写で、ヒリヒリするような空気感、孤独な中で触れた大事な人を、身を呈し守ろうとする男の哀愁、思い出すと咽び泣きそうなほど、孤独な生き様が染みた、ホンモノの凄味が詰まっている
“男も惚れる男”たぁこの事ですよ!!まるで高倉健か

オープニング
ドライバーが強盗の逃走をする場面
「トランスポーター」のフランクのような“仕事”のルール
5分は待つ、連絡は最初で最後、銃は持たず運転だけ
そんなルールが、プロの空気感を醸し出す
そして“仕事”本番
派手なカーチェイスは禁物、闇に溶けるような仕事ぶりがリアルだ、一歩間違えば失敗する、ギリギリの緊張感に震えが走る
主演の天才的なドライビングテクニックを持つ寡黙な“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)はやたらとクルマをブッ飛ばさない。警察ヘリやパトカーをマケばそれでOK。
目立たない外観のクルマで、さりげなく野球場のパーキングに停めて、試合帰りの人波に姿を消す。
自分は殺しはやらないけど依頼された仕事だけはキッチリこなす。
本業はクルマの修理工場で、アルバイトにカー・スタントマンで夜は強盗の逃走を請け負う運転手というふたつの顔を持っていた。。このサエない日常が生きている。

序盤で完璧なマシーンぶりを見せる、家族も友人もいない孤独なドライバーは、ある晩、同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)とその息子と偶然エレベーターで乗り合わせ、一目で恋に落ちる。
不器用ながらも次第に距離を縮めていくふたりだった
彼女により、ドライバーは孤独感から解放されていくが
アイリーン夫スタンダード(オスカー・アイザック)が服役を終え戻ってくるが、ドライバーもアイリーン想いを寄せたことから事件に巻き込まれる
出所後に本心から更生を誓う夫を見たアイリーンは、ドライバーに心を残しながらも家族を守る選択をするのだった。しかし、服役中の用心棒代として多額の借金を負ったスタンダードは、妻子の命を盾に強盗を強要されていた。そんな中、絶体絶命のスタンダードに助けを求められたドライバーは、無償で彼のアシストを引き受ける。計画当日、質屋から首尾よく金を奪還したスタンダードだったが、逃走寸前で撃ち殺され、ドライバーも九死に一生を得る。何者かによって自分たちが嵌められたことを知ったドライバーは、手元に残された100万ドルを手に黒幕解明に動き出すが、裏組織から狙われることに・・・。

暖かい照明に照らされた領域が二人きりの空間になる
終盤でのアイリーンとの別れ。
エレベータ内でのキスは美しいキスシーンだった。
キャリー・マリガンの薄倖な人妻の生々しい儚さが加わり、ドライバー、ライアンの血まみれな生き様と、鎬を削る、ブレない強さは、痛々しくも美しい

ドライバーが身を呈し守ろうとした幸せ
それは、彼が持っている孤独と真逆のものだ
自己犠牲を厭わない男は、
僕に男の美学を見せつけやがる
己の想いに背かぬよう、一度踏んだアクセルは抜かない

ライアン・ゴズリング演じるドライバー(名前が出てこないのも一味)この男の過去が一切語られないだけに、緊張感が増す仕掛けだ。
「レオン」の要素も見え隠れするが、これはやっぱり日本の任侠映画を参考にしている

登場人物たちも、その研ぎ澄ました雰囲気を纏う
ロン“ヘルボーイ”パールマンの、独特の怪演
アルバート・ブルックスの、迷いなき振る舞い
オスカー・アイザックの、憎めない悪党っぷり

「Ryan Gosling didn't get an Academy nomination?」「ライアン・ゴズリングはアカデミー賞のノミネーションを受けなかった?」ということですね。

きっかけはラッセル・クロウのそんなツイートだった
本作「ドライヴ」のライアン・ゴズリングに対し
アカデミー賞ノミネートされないなんて!と憤る
ベテラン名優に、そこまで言わせるのか?
普通にノミネートされるよりも、余計に期待値が上がる

観賞後、男なら無口になること請け合いです。
Kamiyo

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