あーや

日本一のゴリガン男のあーやのネタバレレビュー・内容・結末

日本一のゴリガン男(1966年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

植木等の映画は単純明快なサラリーマン喜劇かと気楽に観ていたら、ふとしたときにハッとさせられる。
例えば「日本一のゴリガン男」。
「世の中まちがっとるぅよ~まことに遺憾に思いますゥ~かァっ!」と口ずさみながらご機嫌にパチンコ屋から出てきて(同じ台詞を中盤に住職役の左卜全も口にする)、そのあと「大人はデモ隊にこれまたまたまたシビレってるゥ~」とおマヌケ顔の人見明(植木等映画の常連脇役)と2人でしびれ節を歌って踊り、「ほんとの戦争はいやだけど~おもちゃでやってりゃ愉快だね~」とヘラヘラ笑顔で走り回る植木等の歌う歌詞は決して能天気ではない。
役の設定だって甘くはない。
元々いた会社が入院中に潰れていて、無理くり入社したのはリストラor自宅待機を言い放つ商社。しかもトップは道楽政治家の2足のわらじを履いているどうしようもない社長。
しかし植木等演じる日本等は、案件が何度理不尽に破綻になったとしてもすぐに立ち直り、電話帳1冊で結局バリバリなんでも売りまくってしまう頭キレキレなサラリーマン。
1966年の映画だからまだ随所にオリンピックの余韻は残っているけれど、非現実的なオリンピック熱が去り現実に還ったその当時の日本はどんな空気やったんやろうか。杞憂かもしれんけど、どこか空っぽな空気が漂っていたのか・・・・?
そんな人たちの中を陽気に「オーッス!よォーーー!ご苦労さん!やってるねぇ!」と大きな口をいっぱいに開けて画面の奥からこちらへのっしのっし歩いてくる植木等は、平成になり四半世紀経った今見てもパワーを分けてくれる昭和イチのエンターテイナー。
いつの時代も目に見えない生きづらさの度合いはさほど変わらないようだ。あとは人頼みせずに自力でどう切り抜けるか。
「サァ?何がなんだかわからないのよ」って言っておきながら「グズグズ言っても始まらないね。ゴリガン!1発生き抜こう」って歌ってる植木等を見て笑っていたら、暫くは健康的に生きていけそうだよ。
あーや

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