滝和也

緋牡丹博徒 お命戴きますの滝和也のレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 お命戴きます(1971年製作の映画)
4.0
上州の風に
舞い散る緋牡丹の
華一輪…

命を賭けて民を
守らんとする男の
狭義に惚れたお竜の
正義の刃が光る…

「緋牡丹博徒 お命戴きます」

藤純子主演、東映任侠路線の緋牡丹博徒シリーズの第七弾です。最高傑作と呼ばれた前作お竜参上に続き監督は御大加藤泰。こちらも負けず劣らずの傑作でした。

お竜は伊香保で襲われていた博徒松を助けた事から、そこの賭場のからくりを暴き、ことを構えかけるが上州の結城親分(鶴田浩二)、多前田親分(嵐勘十郎)に救われる。数ヶ月後結城一家に草鞋を脱ぐことになるが、そこには鉱山からの廃液での公害問題が起こり、百姓に味方する結城一家と精錬所を運営する軍、肩入れする組とが争う場所だった。一人奮闘する結城を助けるお竜だったが…。

今作も御大加藤泰のローアングルからの撮影、固定カメラによる長回し、そして圧倒的なスター達へのヒロイズムを輝かせる演出が抜群で引き込まれます。

冒頭の編笠が切られ、片目から見せるお竜の姿の艶やかさ。緋牡丹博徒の世界に戻ってきたなと感じさせてくれます。中盤の我慢劇の最たるシーンである破れかぶれの敵討ちを止める辺りの演出も長回しからのお竜へのピンスポライトと言うオシャレさ。そしてラストのアクションのローアングル固定カメラの演出。画角の中に飛び込んでくるお竜、はみ出しながらアクション、そして決めポーズから流れていく…この辺りの演出が正にダイナミックにしてお竜さん藤純子さんのヒロイズムを際立たせてます。その後の対決シーンもそのアングル、演出全てが素晴らしい…。

緋牡丹博徒シリーズは高倉健、鶴田浩二、菅原文太と毎回相手役兼助っ人が来るのですが、今作は鶴田浩二の出番。渡世の義理と人情に挟まれながらも、子供への愛、民百姓への情のため戦う親分を好演。朴訥な鶴田浩二の味がハマりますね。ただいつもの助っ人役と使い方が少し違います。子役の少年との関係性がお竜さんを交え疑似家族の様になり、抒情性を高めており、子役はラストにも1役買います。渡世に生きる女侠客の悲しみが出てくるんですよね…。

お竜さん、藤純子様は今作も凛々しく可愛く美しい…。それに付きます。更に前出した殺陣も油が乗り見事になって来てます。やはり簪を投げた後の乱れ髪がまた素敵なんですよね…。正に血染めのヒロイン、緋牡丹のお竜です(^^)

因みにレギュラーの熊虎親分、若山富三郎は出番が極端に少ないので残念、でもあんな出方で来るかと言うインパクトは極大。どんな人脈だよと…(笑)

相手がド外道になればなる程、東映任侠路線は面白いのですが、今作も間違いなくド外道。但し…助っ人がいない点で前作には及ばないかなと。雪の今戸橋みたいなシーンはないですからね…。

でもラストのお竜の登場シーンのアングルや画角がすご過ぎて、当時は待ってました!の声が劇場で飛んでた事請け合いですね。加藤泰の演出の凄みと油が乗った円熟のお竜さん、藤純子様を愛でる快作に間違いはありません。是非このシリーズ見てほしいなぁ…。
滝和也

滝和也