踊る猫

ゴースト・ドッグの踊る猫のレビュー・感想・評価

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
4.0
流石はジム・ジャームッシュ。鋭く働く知性が示す「戯れ」を感じさせる。悪く言えばペラいところがある。『葉隠』や『羅生門』といった日本の極限状態を生きる人々の哲学をベースに、ヒップホップ文化を介して白人対黒人の構図をあぶり出し、しかし基本的にはいつものようにオフビートでまとめあげている。階段をゼイゼイ言いながら上るおじいちゃんギャングたちもおかしいし、真面目に『葉隠』の一節を朗読して作品に独特の陰影をつける。そのセンスは決してダサいものだとは思わない。『葉隠』の真髄を理解してそれに肉付けして作品をまとめたからこそ、この「古びなさ」は来るのだろう。それはわかるのだけれど、そのおかしみとシリアスさの「戯れ」以上のなにかが欲しかったようにも思う。もっと強烈に白人たちを笑いのめすか、ジャームッシュは苦手なようだけれど「女性」を生々しく描くか(この映画で「も」、女性は添え物でしかない)、いずれにせよジャームッシュの「型」を崩すものがあってもよかったのかな、と思った。だが、それをやってしまうとこのオフビートさが出なくなるので結局は私の「ないものねだり」なのだけれど。
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