カツマ

悪魔を見たのカツマのレビュー・感想・評価

悪魔を見た(2010年製作の映画)
3.8
目には目を、歯には歯を、そして殺戮にはそれ以上の地獄を。それは修羅堕ちした男による完全なる復讐。悪魔のような人間に報復するには自らが悪魔になるしかなかった。悲劇の発端が捻れ、拗れ、螺旋を描き、やがて最悪の未来に向けて突き進む。誰か一人でも救われたなら、この映画はこんなにも無惨な記憶となって残ることはなかっただろう。

韓国映画は過激または苛烈な描写が特徴的な作風が多く、振り切っているという印象が強い。だが、今作はその中でも特に容赦のない猟奇性と狂気が真の意味での復讐を問いかけ、おぞまし過ぎる展開が話題を呼んだ作品だ。人は何の躊躇もなく殺され、復讐のスパイラルを止めるものは存在しない。地獄の先にある何かを求めて、男たちの空虚な火花が命を散らす。

〜あらすじ〜

ある夜、捜査官のスヒョンの婚約者がバラバラ死体となって発見された。静かなる怒りに身をまかせるスヒョンは復讐を決意。彼女の死の真相を探るべく、まずは4人に絞られた容疑者たちを一人ずつ洗っていく。一人また一人と手加減のない方法で犯人か否かをジャッジするスヒョンは、ついに犯人のギョンチョルへと辿り着く。
猟奇殺人鬼のギョンチョルはその後も犯行を重ねており、その夜も塾生の女性をその手にかけようと凶行に及んでいた。そこへ全ての概念が麻痺したかのようなスヒョンが現れる。彼はギョンチョルの持つ刃物を交わし、その身体へと手加減なしの殴打を見舞い失神させた。そして、手にしていた発信機をギョンチョルの胃袋に詰め込み、去った。スヒョンの復讐とはひと思いに殺すことではなく、発信機で特定した後、少しずつ残酷な罰を与え続けることだったのだ・・。

〜見どころと感想〜

度を越えた泥沼。バッドエンドから始まって、そのまま墜落していくかのような地獄の沙汰。そう、この作品は『死=復讐』を生温いものとして定義した。そして死の先にある永久不変の苦しみへと斬り込んだ、恐るべき悪魔の報復そのものでもあった。次々に襲いくる悲劇的な死が悲しいほどに打ち捨てられ、クズ過ぎる奴らをグシャグシャになるまですり潰す。

次第に狂気に駆られていく主人公役を端正な顔立ちに『無表情』という名の恐怖を貼り付けたイ・ビョンホンが好演。すでに『オールド・ボーイ』で狂人めいた役が板についていたチェ・ミンシクは、更にその猟奇性に磨きをかけ、骨の髄まで腐り切った男を君が悪いほどに怪演。ほぼこの二人のバトルといってよく、完全に入り切っている演技は役者の精神が心配になるほどだ。

『悪魔を見た』の悪魔は果たして誰を指すのか。『復讐』というテーマに新境地を打ち立て、冥界の先にまで続く絶望が長い道の先をドス黒い朝陽で灯す。韓国映画恐るべし。過剰なことは承知だが、ここまでやれるのもやはり韓国映画の凄さなのだろう。

〜あとがき〜

胸糞映画というか、絶望映画の大定番になっている本作をようやく鑑賞です。半端じゃない容赦のなさ、洒落にならないこの世の終わり。序盤から残酷描写をフルスロットルにして、そのままラストまで爆走していくような作品でした。とにかく後味の悪さは他の追随を許さないレベルなので、元気がない時に観る映画ではないですね。
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