シズヲ

トム・ホーンのシズヲのレビュー・感想・評価

トム・ホーン(1980年製作の映画)
3.3
実在のガンマン、トム・ホーンの顛末を描いた西部劇。変わりゆく時代の流れに飲み込まれていくホーンと晩年のマックイーンがシンクロするかのようなムードが秀逸。老けたマックイーンの寂しげな笑顔、諦観にも似た振る舞いが凄まじい哀愁を放っている。画面の雰囲気も中々に良くて、開拓時代の終わりとそれに伴うホーンの零落を強調するような寂しい絵面が続いていたのがグッと来る。ライフルを用いたマックイーンのガンアクションも実に渋い。

本作が提示しているようなテーマは個人的に好物のはずなのに、実際に見てみると悪い意味で淡白すぎて乗り切れない部分が大きかった。場面転換や話運びがどうも素っ気なくて、牛泥棒退治や有力者達に疎まれる経緯等といった後に響く展開がそこまで効果的に映っていない印象。そういった部分が抑揚の弱いストーリーと変に噛み合っているせいで、全体を通して退屈さが否めなかった。マックイーンの哀愁と肩を並べるだけの魅力が作品に伴っていなかったように思う。

それでもラストの絞首刑執行のシーンが持つ無慈悲で淡々とした空気感(水の音色が絶妙に冷徹で素晴らしい)とマックイーンの表情から滲み出る寂寥感は堪らない。時代の終わりを告げるような何とも言えぬ『虚しさ』にはどうしても惹かれるものがある。
シズヲ

シズヲ