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灰の記憶のharuのレビュー・感想・評価

灰の記憶(2001年製作の映画)
4.0
アウシュビッツのガス室で生き残ったユダヤ人少女の運命。

「サウルの息子」と同じく、ゾンダーコマンドを扱った作品。
「どうせ死ぬのだから」と自らを勇気づけるユダヤ人たちの姿に狂気を感じます。収容所に運ばれてきたユダヤ人たちはみんな知っている。遅かれ早かれ全員が殺されることを。
本作ではゾンダーコマンドとして同胞をガス室へ送り込むユダヤ人だけでなく、家族の命を守るために同胞を使って人体実験を行うユダヤ人、仕事だからと割り切ってユダヤ人を処刑するドイツ人というさまざまな立場の人たちが登場します。人体実験を行うユダヤ人医師は大変優秀なため、脅されてはいるもののある意味ドイツ人よりも優遇され、彼自身の命は保証されている。そんな彼は家族と共に生きるために必死ですが、それに対してゾンダーコマンドのユダヤ人たちは「俺たちはもう生きていたくない」と言います。それはこの苦しみから逃れたいというだけではなく、同胞を騙してガス室へ送り、遺体から金品や食べ物を盗むような生き方に誇りなど持てないということ。たとえ解放されたとしても生きる気力は残っていない。だからガス室で奇跡的に生き残った少女に、希望を託したくなったんだと思います。
あらすじも「サウルの息子」に似てますが、こちらの方が見やすいかもしれません。
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