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教室の子供たち -学習指導への道-のtetsuのレビュー・感想・評価

5.0
「戦後の教育現場という私たちにとっての異世界を見事に描いた大傑作!」

大学の講義にて観賞!

煙突の黒煙がたなびくある街、子どもが学校へと向かうところから映画は始まる。小学校教師の児童指導教材として作られた本作。
教室という無法地帯を舞台に個性豊かな子供達や彼らの班活動の様子を教師の目線から描く。

映画はフィクションである。
たとえ、ドキュメンタリーであったとしても、そこには監督の意図や少なからぬ偏見や固定観念があるからだ。
しかし、この映画はやすやすと、その考えをぶち壊した。
映画はフィクションであるという"固定観念"をぶち壊してきたのだ...。

どうやら、本作はある小学校のクラスに監督・その他製作陣が密着。
約1ヶ月ほどの時間をかけ、生徒がカメラを意識しなくなるまで日常に溶け込ませ、撮影を決行したのだという。

"狂気の沙汰"である。

しかし、そんな執念とも言うべき覚悟で撮った本作は、まさに元祖「ニンゲン観察バラエティ モニタリング*」!
*TBS系列で放送されている一般人隠し撮り系バラエティ番組

カメラを意識していないからこそ浮かび上がる彼らの"一瞬一瞬の輝き"は今観ても新鮮そのものであった。
(余談ではあるが、授業中、ほとんどの生徒が自らの意思でどんどん挙手をしている姿は、教室が静まり返っていた自分の小学校時代と比べ、まるで異国のようでもあった)

周囲に中々馴染めない女の子の様子をグラウンドの真ん中に一人というシーンで強調させたり、クラス全員が無邪気に歌っているラストシーンなど、カメラの構図も完璧。

さらに、普通に映画として話運びが上手い!
(『皇帝ペンギン』の100倍は面白いと思う←個人の見解)

クラス、ひいては、班活動という、ごく小さな世界のようで、実は"社会の縮図"ともいえる子どもたちの世界を描く一方、生徒たちの家庭環境にまで目を向け、"個性"の尊さを描く見事な展開には、ただ脱帽だった。
("個性"というテーマを強調するように、作中には生徒の実名まで登場していた)

是非、一度は見ていただきたい記録映画の名作だった!

参考

図書
『ペンギン・ハイウェイ』
映画版が超絶好みだったため、一気に読破してしまったのですが、この本に登場する主人公・アオヤマ青年も小学生の設定なので、読んでおくとお互いより楽しめます。

サイト
ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』|TBSテレビ
http://www.tbs.co.jp/monitoring-golden/
(知らない人のために、念のため)

配信映画|科学映像館
http://www.kagakueizo.org/movie/
(記録映画について調べていると、とんでもないサイトを見つけてしまった...。)

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授業メモ

授業:ジャーナリズム史
題材:記録映画の開花
解説:
ジャーナリズムの歴史は映画からも切り取ることができる。
1950年代に設立した岩波映画製作所*は、98年の倒産に至るまで約4000本の記録映画を製作。
40年代に量産されたプロパガンダ要素の強い記録映画とは異なり、様々なものを題材に当時の様子が写し取られている。
現在では貴重な映像資料として、研究対象としても使われているとか...。

*岩波書店のメンバーによって作られた。

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Children in the Classroom" Susumu Hani 1955
https://youtu.be/ByhRTLolKII
(最後まで、お読みいただき、ありがとうございます。お礼にYoutubeにアップされた本編のURLを貼っておきます。笑)
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