みかん

メメントのみかんのネタバレレビュー・内容・結末

メメント(2000年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ノーラン監督新作オッペンハイマーも上映開始されて気になっているけど、まずはずっと気になっていた本作を見ることに。
ノーラン監督の主要作品はこれでほぼ見たかな。

ノーラン監督お馴染みの時間逆行。
インセプションもテネットも、何ならダンケルクもそうでしたが、毎回作りが難しくて、何とか理解しようと神経を研ぎ澄ましながら見ているから、毎回見終わるとちょっと疲れてしまう。。。
本作も難解映画として名高い作品ですし、身構えて見たけど、やっぱり難しかった!

襲われた後遺症で、新しい短期記憶がなくなってしまう主人公レナード。
彼の身体に自身が刻んだ、過去の自分が残した記録をたどって、妻を殺した犯人を追いかける。
冒頭、犯人と思われるある人物を殺すシーンから始まり、見ていて常に今起こったことは何だったのか??シーンごとに、この人誰?このメモの意味は?いつ電話したの?などなど、それらの疑問をレナードの目線で私達も起こったことの過程を紐解いていくことになる。
メモの意味、記録の過程を、時間を逆行しながらストーリーを追う、不思議な感覚。
テディからナタリー、ナタリーからドットやジミー、そしてジョンGと、関連人物達をたどっていくことで、犯人に近づいているんだろうなと、最後は真実を知って終わるをだろうと確信していたら。。。
なんとまぁ。

記憶がないことの恐怖。
レナードは記憶がないゆえに記録して、その記録を真実と捉えていたけど、その記録は本当に真実なのか。
真実とは何か。
環境要因だけでなく、思い込みや思考のクセって誰しもあると思いますが、意図せず自分の良いように真実を捻じ曲げて、事実から離れていく。
しかもその歪みを自分では気付けない恐ろしさ。。。
これは私達にも起こり得ることですよね。
ラストには冒頭の結果へつながって、思わずゾッとしてしまいました。

妻を殺されたことも、本当は殺されていないことも、妻の死の真実も覚えていないのに、それでも復讐を誓う。
覚えていないのに、なんでそこまでして復讐したいのか?
感情は忘れられないと言うけれど、記憶がないがゆえに、どこまで本当のことなのか自分でも分からないから、自分の生きる意味や信じるものを求めて、自分の中でストーリーを作っていく。
途中途中に挟まるサニーの話もそうですが、レナードの姿と重なった瞬間のなんとも言えない恐ろしさ。
これを映像として魅せることも衝撃。
よくこんな作品つくれるよなぁって思います。ノーラン節!って感じ。

少し話がそれますが、私の父親が認知症になって短期記憶がなかなか保てない状態なので、本当に本作のレナードのような状態で会話したりするんです(認知症自体個人差で様々な症状がでるし、本人の元の性質とかも相まってでる症状もあるとは思うので、理解が難しい病気ではあります)。
本人もさっき話した内容を覚えていない。
過去の話も部分的に忘れちゃってたり、自分がした行動も忘れちゃうと、辻褄が合わないことが増えるから、自分の中で話をつなげようとしたり目的を見つけようとして、本当は起きていないことを補完するように混ぜて話すようになる。
加えて、時には幻視まであったりするので、それも真実として捉えたりする。
明らかに私には嘘の話に聞こえるけど、どこまでも本人にとっては真実なんですよね。
思い出すら変わってしまうから。
本人もわからないことが不安そうだし、覚えていようと必死にメモしたり、繰り返したり、何回も確認したり。
そんな姿を見ると本当に残酷な病気だなと思うし、とても悲しくなる。
それと同時に、人の記憶や脳の不思議さも感じますね。
レナードは認知症ではないけど、記憶って曖昧で都合が良いものでもあるなと、本作を通してその脆さと恐ろしさを感じてしまいました。

個人的に、ノーラン監督作品は結構好みが分かれるんですが、本作はかなり好きでした!
インセプションやダンケルクは好きでしたけど、インターステラーやテネットはあまり面白さを感じれなかったので。

あと、ガイ・ピアースはアイアンマン3以外でちゃんと見たの初めてでしたが、かっこよかった!
ほとんど彼1人の立ち回りで展開していくのに、謎めいた不思議さもありますが、彼が魅力的で絵的にも見ていて飽きずに最後まで惹き込まれました!
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