みかん

12人の怒れる男 評決の行方のみかんのネタバレレビュー・内容・結末

12人の怒れる男 評決の行方(1997年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

有名タイトルなので、ずっと気になっていました!
ほんとは1957年版を見ようと思っていたのに、勘違いでリメイク版のほうから見ちゃいました。
面白くて、見終わってからそういや白黒じゃなかったな…って気づいた。アホすぎる。1957年版もちゃんと見たい。

父親殺しの罪で裁判にかけられた少年の、有罪を主張する11人vs無罪を主張する1人の陪審員達の議論だけで進行する作品。
ワンシチュエーション作品ってこうい作品のことを言うのね。初めて見たな。
場面転換とかないのに、白熱する議論から陪審員達の意見が変わっていく様子に、どんどん引き込まれて面白くて最後まであっと言う間でしたね!

他人の命に無関心、凝り固まった価値観、前科があるから、スラム街出身だから、動機があるから、殺してやる!って言ったから、皆が有罪と疑わないから。
状況証拠からの偏見で、有罪と決めつけ判決を下すことの恐ろしさ。
一種の集団心理も働いてるのかも。
「少年を信じないのに、なぜ目撃者は信じる?」って問いかけが、まさに真理を突いているなと。
人間は間違える生き物。
証人も本人は嘘はついていない。嘘の意識がない。でも、それが間違いだったら?
感情をもつ人間に、真に公平な判断なんて出来ないのかもしれない。
自分の視点に客観的な視点で判断なんてなかなか出来ないしなー。

冤罪を着せられた人は、一生が潰される。
人を死に追いやるのと同じだよね。
自分の一票に命がかかっていると、本当の意味で突きつけられたとき、有罪と断言できるか?
少年が無実かも、と頭によぎった瞬間から、事実が違って見えて矛盾に気づきだす彼らの、根拠としていた事実がなんて曖昧なものだったかっていうのがわかる。
皆が証言を「信じる」「信じない」ってところで言い争っていて、こんな議論に命がかかっていると思うとめちゃめちゃ恐ろしい。
特に、3番の頑固なじぃちゃんとか、帽子の人とか、誰よりも感情的で全部の台詞がブーメランなんよね。
意見を有罪から無罪に切り替えたことを不誠実だとか裏切り者とか、全く合理的でなく感情論で論点がズレまくっているしで、哀れですらありました。

事実は提示する人により色づけされるっていう台詞にもある通り、これって身近なところでもありえる話。
今の情報社会では、一方的で表面的な事実だけで判断しちゃうような状況が溢れてる。
いつの時代も、人間は情報を正しく判断する方法を模索しているんだなって考えさせられた作品でした。

最後に。
8番のおじいちゃんの話も、本作を見ている私達にとっては状況証拠でしかないよね。目撃者の証言が嘘だったとして、逆にほんとに有罪だったら。。。
皆が信じてるし、言っていることは辻褄が合うし、説得力がある。
ただ、8番の陪審員がもし正義を掲げた扇動だったら。。。
有罪である者を無罪にすること、無罪である者を有罪にすること、比較できないけど、人の死を考えたらこんな状況で安易に有罪には出来ないのが答えだけど。

広告代理店の12番の揺れ動く心境が一番わかるよ…って思いました。
みかん

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