みかん

マネー・ショート 華麗なる大逆転のみかんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

2008年のリーマン・ショックを発端とした世界的な金融危機の引き金になったとされる、サブプライムローン問題。
アメリカの住宅バブル崩壊により、低所得者層を対象にした住宅ローンであるサブプライムローンが破綻し、関連証券を大量に購入していたアメリカ大手投資銀行グループリーマン・ブラザーズが膨大な負債を抱え経営破綻したことで、世界中に金融不安がひろがり、株価暴落や世界同時不況が起きました。

本作は、その裏でいち早く経済破綻の兆候に気づき、ウォール街を出し抜いた男達の物語。
実話ってのが凄い。

映画のタイトルにもある「ショート」というのは「空売り」を意味していて、価値が下がると見込んだ株を売り買いして利益を得ること。
彼らは、住宅ローンを担保として発行される証券MBSのうち、実際はサブプライムローンなどトリプルB以下のMBSを集めただけのCDOという商品(価値は無いに等しいが、格付け会社の忖度等によりAAAに格付け)がヤバいことに気づいて空売りすることに。
CDOは直接空売りできないから、債券等に損失がでたときに保証してくれる保険商品CDSを合わせて大量に買い付けて、CDOが破綻した時に莫大な保険金を受け取ることを狙ったってことですね。
この保険料も破綻するまで掛け捨てだし、保険料だけでもマイケルは劇中500万ドルとか言ってたので、絶対にCDOが破綻することを確信していたんだなと。
土地価格が上がっていることが前提でサブプライムローンは成り立っているわけですが、低所得者層がローンを払えなくなりどんどん家が手放され土地価格が下がっていくことを現地に見に行って気づくシーンも描かれていました。
数字の価値と実態の落差が怖くなるシーンです。

本作で特に際立っていたのが、スティーヴ・カレル演じるマーク。
マークが終盤、ボロボロの合成CDOの市場が、元になってるサブプライムローンの20倍もの金額になっていることを知り、世界経済の破綻を確信して呆然とするシーンが特に印象的でした。
副題からも、もっと華やかな逆転劇なのかと思っていたけど、ラストには経済の破綻を目の当たりにして、自分達は巨額な資産を獲得できたけど、その裏では腐敗した金融業界への絶望と、何百万人もの失業者が生まれ苦しむことになる世の中に悲観している姿がありました。
マークは資産を得ることよりも、兄の死との向き合い方や腐敗した金融業界の真実を知りたいと追求していき、自分も腐敗していると悩み正しくありたいと願う内面との葛藤や立ち直りも描かれていて、本作はリーマン・ショックの裏で起こっていたことを知れる一方で、世界が混沌とする中での彼らの葛藤や反応の違いもエンターテイメント作品として見応えがありました。
ブラピ演じるベンも、裏をついて巨額の資産を獲得出来るぞ!ってはしゃぐジェイミー達を窘めるシーンもありましたね。
誰かが得をすれば誰かが損をする世界。
強欲資本主義の成れの果て。
 
今は投資ブームでもありますし、私も少しずつ勉強中ですが、投資というものは上手くやれば個人が儲けることも可能だけど、飽くなき情報収集と情勢を読む力をつけること、発想力や時にはリスクをどこまでとれるのか、長期的な視点での辛抱強さとか、色んな人間的な素質や努力、決断力なんかが必要なんだなと本作を見て改めて感じました。

あと、難しい用語は劇中でちゃんとポップに説明してくれるので、詳しくなくてもある程度はちゃんと理解できるようになっていました!
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