ひろ

影武者のひろのレビュー・感想・評価

影武者(1980年製作の映画)
3.5
黒澤明監督・脚本によって製作された1980年の日本映画

カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した

外国版プロデューサーに、黒澤監督を尊敬してやまないフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが名を連ね、「世界のクロサワ」の健在ぶりを示した作品。当時の日本映画歴代興行成績の記録を塗り替えた大ヒット作品でもある。

黒澤明と言ったら時代劇だが、実在の戦国武将を題材にしたのはこの作品だけ。武田信玄の影武者となった男を描いた歴史スペクタルであり、他の日本映画とは別次元のスケール感は、さすが黒澤明といったところ。誰もが知っている有名な武将が登場するので、他の作品より解りやすい作品だと思う。

カラーになってからの黒澤監督は表現の仕方が変わったと思う。色を意識した画面作り、その色彩感覚はまるで岡本太郎。幻想的なシーンがあるのは、カラーになってからの特徴だと思う。武将たちの着物や甲冑なども凝っている。武田の代名詞である風林火山の色分けがかっこいい。戦国時代の幟が好きだから、武田の幟はたまらない。

当初は勝新太郎が主演だったが、黒澤監督と衝突して降板。代役に中代達矢が起用された。確かに勝新は武田信玄のイメージにぴったりだったと思うけど、名優・中代達矢の演技は文句なしだった。弟の信康を演じた山崎努も、若い頃から黒澤映画で揉まれただけに、貫禄たっぷりの演技だった。

信玄の息子である諏訪勝頼を萩原健一。武田の武将を根津甚八や大滝秀治などが演じ、側室を桃井かおりと倍賞美津子が演じている。現在も活躍する俳優がたくさん出演しているので楽しめるはず。さらに無名時代の阿藤海、電撃ネットワークの南武虎弾、柳葉敏郎、山田五郎などが脇役やエキストラとして出演している。

179分という長尺で、風林火山を再現した合戦のシーンなどは圧巻だが、ちょっと眠たくなる。全体的にいらないシーンが多かった印象だったけど、監督が編集の時間が足りなかったと言っていたみたいなので納得。完璧主義の黒澤監督らしくないけど、色々な圧力があったんだろうな。

黒澤明監督みたいなスケールの大きい作品を作らせてもらえる監督はもういないから、この監督がどれだけすごかったかがよく分かる。黒澤明がいなかったら世界の映画の進歩は遅れていただろうけど、現在の最新の技術で、予算の制限もなく映画を作ったら、どれだけすごい映画ができたんだろうと考えずにはいられない。
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