ショウコ

ドッグヴィルのショウコのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
3.4
舞台演劇をそのまま撮った様な映画はいくつか観た事ありますけどここまで簡略化されたものは初めて。ドリフのセットが超ゴージャスに思えるレベル

ドッグヴィル=ミニチュアのファンタジー村と思った方が良さそうです。ロッキー山麓とされてますが、過去に警察が来た事も無ければ社会的規範も歴史も無く文化は最低限…つまり「法という枷から外れた人間たちの象徴」って事の様です。ちょうど、原寸大のお人形をあれこれ動かしながら神視点でシミュレーションをやってる感じか

そこへ、掃き溜めに鶴とばかりに外から絶世の美女が助けを求め逃げ込んで来るわけで…最初こそ体裁を繕っていた町人の偽善がベリベリと剥がれていくサマはある意味爽快。脳みそを下半身に吸い取られヤリたがる男たち、徒党を組み嫉妬する女たち…。「やりたくてやってるわけじゃないんだ仕方ないんだ」って裏腹な台詞はひたすら醜いし、抑えた演技も相まってメンタルゴリゴリ抉られます

でも不思議と目が離せないのはそれなりの説得力があるからなんでしょう。リアリティに欠けた所もあるんですが、逐一挟まれるナレーションが的確で「閉鎖社会あるある」に頷いちゃうし、ちょいちょい挟まれる心理描写と皮肉ワードが鋭くて面白い。章の小見出しに少しずつ展開のネタバレが含まれてるのも先への興味を引き全く飽きなかった

さわやか3組の感想文に「いじわるするのは良くないと思います」と書いて自分だけは違うのだと安心する感じに似てるんですが、だんだんダメだコイツらすぐ駆逐しないとと思わされたあたり私も思惑通りに踊ったみたいです💃




3時間もあるけどメッセージはシンプル。「人間の本質は犬と同じである。罰を与えなければ学習しない」「もう片っぽの頬を差し出せとか言ってるけどそれは綺麗ゴト。人間は神じゃないのでね」ってとこかしら🤔

グレースの思考と行動はキリストになぞらえてるんだと思いますが、彼女は終わり間際にフェイントかけて「ソドムとゴモラ」へと急ハンドルを切ってしまう。赦す事が美徳という考え方にカウンターを食らわせ、みんな死んじまえ!って叫ぶのが目的の映画っぽい

でも結局プロットは典型的レイプリベンジであり、許さないタイプの作品ばっか観てる私には今さら感が…。薄めのカタルシスと合わせて少し拍子抜け(あるだけいいか!)
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