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危険なメソッドのArxのレビュー・感想・評価

危険なメソッド(2011年製作の映画)
3.6
例えば「クラッシュ」で洗車シーンでスポンジが車に擦り付けられる様子が卑猥なものに見えるような、また「ビデオドローム」でビジネスのためにソフトポルノを探していた主人公がSM的な欲望に目覚めていくように、クローネンバーグの映画は常にフロイト的(性衝動)分析が可能であった。そういう意味では、この映画を作ることには非常に納得できる。

「快楽が単純なものか」「単純さ、複雑にしているのは自分達だ。父は成熟と呼び、俺は降伏と呼ぶ」
「もし性行為が相手と融合することなら個は個の中に没入し、自己は破壊されてしまうわ。だから自己防衛が働いて性は抑圧される。社会ではなく自己の問題よ。本当の性衝動は自我を破壊する」
こういったクローネンバーグが長年描いてきたような話が繰り広げられるので彼のファンとしてはたまらないものがある。惜しむらくはそれをもっと異形に見せてれることを彼にはには期待してしまう。(セックスシーンも彼にしてはかなりソフトに感じられる。)
とはいえ、別に映画として質が低い訳ではなく、無駄のない編集、美しい20世紀初頭のセットなどは素晴らしい。
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