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バッファロー’66のsoのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.0
大学生のときに中古のVHSで買って何度も観た。
その後ヴィンセント・ギャロの音楽や絵画に虜になり、本作のことはしばらく忘れていた。
しかし、久しぶりに観てみると、音楽や絵にみられるようなギャロの圧倒的な美学が映画においても遺憾無く発揮されていることに気づく。
ギャロは何をやってもギャロだ。

車内で作戦会議する車を四方から映すシーンと、その後のテーブルを囲む4人を四方から映すシーンのシークエンス。
グーンとの電話中、顔がギリギリみえるだけのビリーと、対照的に全面にだらしない裸が映し出されるグーン。
人物の撮り方やカットの移り変わり、全てが理屈抜きに楽しく、なんでもないようなシーンでさえいつまでも観てられると思ってしまう。

さらに視覚だけでなく、音でも楽しませてくれるギャロ。
自演曲も、イエスの使い方もズバ抜けてるけど、改めてギャロの声に痺れる。
ナイーブなキャラクターにどこまでも耽美的な美しさを与えているのは、やはりあの中性的な声。
怒鳴ったり、泣き言をつぶやいたりするあの声と、ステージとなったボウリング場で流れるMoonchildの憂いを帯びたメロディは一体となり、ビリーという人間を何よりも伝えてくれる。

ギャロの作品のなかでは異端と言えるほどポップな本作。
8年前に行けた彼のライブで歌われたMoon Riverのカバーは思い出すだけでも鳥肌が立つけど、きっとMoon Riverを歌いたくなるような、屈折した王道への愛情がきっと彼の内にあって、それが吐き出されて結晶した彼の唯一のスタンダードこそ、本作「バッファロー'66」なのだと思う。
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