このレビューはネタバレを含みます
当時の記憶ではただのグロ映画、って印象だったけど今見てみると意外と秀逸な描写が多くてびっくりした。
マカオで起こった実話を基にした話で、飲食店で働く男が遺体を饅頭にして客に出していたという話。
今でこそ、超大物香港スターであるアンソニー・ウォンだけど、当時はこんなに太ってて暴力的な演技ができる人だったのかとしみじみ思った。
本人は至って温厚な人らしいんだけど、役になりきれる俳優って本当にすごい。
血塗れの顔で包丁を持って目を見開いているシーンや、取調室で饅頭の中身をニタニタしながら告白シーンなど、鬼気迫る演技に感心した。
細かなシーンだけど、刑事から尋問を受けている時に、テレビレポーターの前に飛び出して「警察が一般人に暴力を振るってるぞ」というシーン等、堂々たる狂気のサイコパスではなくて事実を基にした「悪人」という描かれ方をしているのが気に入った。
セブンのように、自分の信念や宗教観に基づいて事件を犯した人物とは異なり、不可抗力と快楽で殺人を犯したただの悪人として描かれないと、実話だけに被害者が浮かばれない。
昔に見た記憶だけだったから曖昧だったけど、刑事たちがクソポンコツで作中唯一の癒やしとなっている。
特に毎度違う美女を連れている警部さんが実は一番有能だったりとか当時の警察に対する風刺も入っているのかと勘ぐるレベルだった。
特殊な枠ではあるけど、思い出補正だけでなく今見ても良作だった。
◆良いところ
- 1980年代の映画にしては特殊効果にこだわりが見られる。
- アンソニー・ウォンの狂気を感じる演技が素晴らしい。
- 女子供容赦無く殺していく東洋系グロ映画である。
- 後半の刑務所で小さな伏線を回収したりと、ストーリーがしっかりしている。
◆悪いところ
- 無能警察たちのパートがいささか長い。