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湖のランスロのsicklychicのレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
3.5
「たぶん悪魔が」と同日鑑賞。
「スリ」が学生の頃からウォッチリストに入ったまま未鑑賞のブレッソン作品。

ど素人が口に出すのもおこがましいのですが、「うわぁぁ、上手い…」と何度も思ってしまった。
何が上手いかはハッキリ言えないのだけど、一つ一つの微細なシーンにも意味があるところや、セリフがなくても仕草やカットで雄弁に語るところなど、構造や配色、登場人物の美しさは言わずもがな、観ていて「わたしも何かやらなくては」という衝動にかられました。

ちょっと血は嘘っぽい。
多分カラーコレクションのせい。

アーサー王伝説を読んでいれば監督の新解釈がどんなものかも良く分かると思うのだけど、未読で鑑賞しており、色々解釈が違っているところもあると思います。

それでも登場人物の性格や心の揺れは伝わってきたように思います。
ランスロ渋い。
アルテュス王は信頼の厚い、またその信頼にフラットに応える良い王様のように見えたけど、どうなんでしょう。
ゴヴァンは本当にピュアな青年で。
王妃も時代に翻弄された女性の1人なのだと思います。

西洋の甲冑の仕組みや着こなしの資料としても見応えありました。
ウォーリアー映画をあまり観ないせいもあるかもですが、甲冑の背中をこんなに観たことありませんでした。一人一人に合わせて作るの大変だろうなぁと思いながら、絵本の「ウォーリーを探せ!」がフラッシュバック。

CGでなんでもスペクタクルにできてしまう今だからこそ、限られたものの中でいかに表現するかという工夫も勉強になりました。いやほんと、すごい。
ランスロの愛馬も。

ただ、もしこの映画も素人さんの演技なのだとしたら、「湖のランスロ」はプロの俳優さんが演じたものも観てみたいと思いました。おおげさな演技は必要ないけど、なんとなく。

冒頭の「先を歩く音が聞こえたら年内に死ぬ」、時代は違えどなるほどなぁと思いつつ、戒めとして覚えておこうと思います。

そして観終わって席を離れるときの気まずさ。余韻ほしい。笑
マスクしてて良かった。
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