マヒロ

悪魔のマヒロのレビュー・感想・評価

悪魔(1972年製作の映画)
4.0
18世紀のポーランドで、国王の暗殺未遂により精神病院に入れられていた青年ヤコブは、政治的動乱の最中で突然謎の男に助け出される。長らく会っていなかった家族の元に帰ることにするヤコブだが、荒れ果てた世の中の影響で家族は皆悲惨な状況に身を落としていた。衝撃を受けるヤコブだったが、そこにつきまとう謎の男は彼にカミソリを手渡し良からぬ誘惑をする……というお話。

『ポゼッション』『シルバー・グローブ』のアンジェイ・ズラウスキー監督の初期作。
ズラウスキー作品といえばアッパーなガイキチ感が魅力(?)なイメージだが、長編二作目である今作でも既にその感じは十二分に出ており、とにかく登場人物は訳のわからんことを捲し立てるし、突発的に暴力が巻き起こったりと常に何が起こるか分からない危うさがある。
ストーリーについては、ある程度追っかけることは出来るので全く意味不明ではないが、芯の部分までは理解が及ばないという掴みどころがない感じで、置いてけぼりにされるわけではないが常にぶん回されているような感覚が面白かった。

バックで流れているプログレみたいな変な劇伴と、青緑もしくは銀っぽくもある独特な色彩で描かれたこの世の果てみたいなポーランドの荒廃した風景が強烈で、映像を眺めているだけでも満足できてしまうよう独特の風格を放っている。
この感じでSF大作として作られる筈だった『シルバー・グローブ』、もし完成してたら凄いことになってたんじゃないかと思うと、つくづく未完成で変な形でリリースされてしまったのが惜しく感じる……。

(2022.202)
マヒロ

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