悪魔の作品情報・感想・評価

「悪魔」に投稿された感想・評価

微笑

微笑の感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ズラウスキーの二作目。
彼の作品はこれで一通り観たことになるが、本作はとりわけ気に入った。
国王の暗殺を企て、反体制の英雄ともなり得た男が、悪魔の導きを機に破滅へ転落していく。
近親相姦や母との姦通は、エゼキエルに「神聖」と語られた男の聖性を殺し、度重なる殺人へと繋がる。十字に架けられるなど、時折英雄的存在への回帰の兆しを見せるものの、それも尽く失敗に終わり、混迷の度がいや増していく。
随所に散りばめられた悪魔的なモチーフも魅力的。娼婦に堕した母はワルプルギスを想起させるように登場し、蛇を体に纏って乱交を開催する。折々登場する劇団も、わざわざ綱渡りにキャメラを向けたがる辺り、『ツァラトゥストラ』を思わせて止まない。尤も、主人公は超人にもなり得ず、歪曲したハムレット像を朧になぞるようにして死んでいく。父の死を発見する場面で、フュースリの『夢魔』を模したような構図を取っていたのも印象的だった。
奔流する悪魔的イメージが、繊細な美術や冷たい自然光に彩られて、退廃美を写し撮っているのも良い。映像の美しさならズラウスキーきっての作品にも思える。
暴力的とも言えるあのキャメラや、狂騒的な役者の振る舞いも相変わらず。特に婚約者の狂乱ぶりが、後の『ポゼッション』のアジャーニと酷似していたのが面白かった。
初っ端からのトランス状態、正気の人間がほぼ皆無のクレイジーさは2作目にしてズラウスキー節全開。初めてシルバーグローブを観た時は面食らったけれど、ここまで強烈な個性を一貫してぶちまけられると愛おしさと尊敬の念が湧いてくる。

精神病院から謎の男(=悪魔?)によって連れ出されたヤクプが、彼の手引きによって不条理な世界に巻き込まれていく。血がほとばしり、叫び、踊る。この謎の男がいつもどこからともなく現れて入れ知恵をするのが訳がわからずコメディに見えてきたり。

とにかく女性がみんなきれいだし構図や映像の美しさにはうっとり。遠近に対象物を配置する等ばちっと決まった構図がこれでもかと。一方で手持ちのブレブレショットも頻出(酔いそう〜〜)
ズラウスキー作品の音楽とか効果音がいつもあんまり好きじゃなくて、そこだけ惜しいかな。

自分が狂ってるのか?周りが狂ってるのか?これは監督の一貫したテーマだったのかもしれないですね。
リアリズムで悪魔を描くとこうなるのかって感心するほど悪魔っぽいおっさんだった
メモ帳

メモ帳の感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

敗残者は脱走者の夢を見るか。

後日、軽く追記。

これはもしかしたら書かない可能性もあるので、簡単に書くと、修道院の牢獄から脱出するところから全部夢なのではないか、という可能性を書こうとしました。シーンごとの繋がりを意図的に切っている所や、殺される人の血が一切出ないところなど、まだ他にも色々あり、そう思います。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.5
【2作目にしてFPSスタイル確立】
ズラウスキーDVD-BOX最終章を観た。ズラウスキー監督2作目にして、既にFPSな映像作りを確立していた!

18世紀、第二次ポーランド分割により、ポーランドが滅亡し、兵士が修道院を襲う地獄絵図をFPS視点で描くことで観客に追体験させる。

国王暗殺未遂として収容されていた男ヤクプと尼僧は謎の男によって、地獄の修道院から救助され、故郷を目指すのだが、ヤクプは『神曲』さながらのさらなる地獄を観る。

なるほど、この作品は巧みにFPS視点を使うことで、ヤクプと同じ位置で発狂ものの地獄を体験させるのか!監督2作目にして圧倒的作家性にノックアウトされる。

ヤクプは、地獄の中に垣間見る恋人や父の残像に狂う。「世界が醜く歪んで見えるのは、わたしが狂っているからなのか、それとも真実か?」

ヤクプは決して、精神疾患者ではない。この世がパラノイアの塊だった。歴史的背景の知識があるに越したことはないが、なくてもこの地獄巡りは新鮮で鳥肌ものの体験をあなたに与えるだろう。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

3.5
‪「悪魔」‬
‪ポーランドの歴史は非常に苦難だ。だからこそ本作の様な"悪魔"を世に出せる。カオスの中の悲劇を狂える程の絵面で観客に見せる本作はA.ズラウスキーの失望と製作野心のお陰で今観られる。ワイダ作品の多くが当局に禁止され屈辱を味わった様に彼の悪魔も公開禁止をくらった。この混沌の時代を是非見てくれ…‬
ninjiro

ninjiroの感想・評価

4.5
冒頭から、ずーっと地獄絵図。

ズラウスキーのどの作品(知る限り)にも言えることだが、この異常なテンションは何だろう?
作画的なことで言えば、手持ちカメラによるテンション作りは深作欣二始めその類があるが、それは要所要所の瞬間沸点の表現としての真っ当なテクニックである。

この作品の中身は、その撮影の異常なテンションと、異常なシチュエーション、不安感を煽る狂った伴劇、そしてキャストの演技がそれぞれが異常なテンションで発狂したように怒り悲しみ我を忘れ喋り叫び、時に猥雑であり、時に善悪を通り越した彼岸にあるような、押し並べて誰一人まともな人間が居ないという、全てが異常な状態で、徹頭徹尾カオスに満たされた、狂気の空間である。
この空間に於いて、ズラウスキーはどのようにこの狂った演技を演出したのか、そもそもちゃんとしたプランやプロットがあって撮影をしたのだろうか、と疑いたくなる程の、迫真の狂気の見本市である。

自分が普通の感覚の持ち主である、と自信を持って言える人は、本作を絶対に観てはいけない。

そんじょそこらの視覚的グロを観る耐性とは比較にならない程、人を人とも思わぬハイパーな背徳に対する耐性を要求されたかと思えば、おぞましいの程の対人執着を見せつけたり、自由自在、麻薬的な狂気の浮遊感は、確実に脳の一部を痺れされる。

筋を追ってもどうやっても整然と意味が通じないことばかりだが、これも最早この監督の個性である。
さっきまでの清廉の君子然とした者が次の瞬間狂ったように喚き、恐ろしい勢いでのたうち回り、全く理屈に合わないことを理屈として当たり前に行動原理とする異様な世界。
まさに悪夢とはこのような世界である。

この世ならぬ、まさに地獄のような世界を行脚する主人公と我々。

悪魔とは一体誰のこと?
18世紀末、怪しいプロシア人の男により囚われていた精神病院から抜け出したたヤコブは、家路を目指すのだが、その道中、まるで悪魔にとり憑かれたかのように残虐行為を繰り広げて行く猟奇殺人鬼と化す。
その描写があまりに凄まじく、暴力も性行為も半端なく過激で残酷、汚物まみれで死体の山で、出てくる人間も変態ばかりで、アシッドな幻覚トリップまである狂いっぷりのとんでもない鬼畜なキチ○イ映画。生易しさの一切ない、荒涼とした風景の冷たさ。
抑圧が人を狂わせたのか、狂っていたのか。監督の正気さえ疑うわ(笑)
まるで激流に呑まれるような勢いで観た後、素晴らし過ぎて茫然とした。
狂っているが美しい。
まさしくアナ-キ-で本当に向こう側へ逝っちゃってるから、上記の内容に少しでも抵抗感じる方には決してお勧め出来ない。