東京キネマ

遥かなるアルゼンチンの東京キネマのレビュー・感想・評価

遥かなるアルゼンチン(1940年製作の映画)
3.8
製作は20世紀フォックスの大プロデューサーダリル・F・ザナック。監督は俳優出身のアーヴィング・カミングス。脚本は後に『ベン・ハー』を書くことになるカール・タンバーグによる1940年製作のミュージカル映画です。

お話は、まあアメリカの定番ミュージカル・コメディなんで、どうでも良いといいますか、フォーマット化されております。ボーイミーツガールから恋のさやあて、そして誤解が溶けて仲直りというルーティンで、後は設定とロケーションだけ決めれば一丁あがりってことなのですが、本作品は設定がアルゼンチンということなのでちょっとエキゾチックな匂いになっております。

何と言いましてもテクニカラーが美しいです。湿気があるといいますか、赤の発色が良くて、これぞミュージカルといった雰囲気を際立たせています。

以下、挿入曲。

♯1オープニング曲“South American Way”

カルメン・ミランダのソロ・ナンバー。これがアメリカ映画でのデヴューですので、あの有名な“チャタヌガ・チューチュー”も、フルーツ・ハットもここからがスタートです。アメリカでは本作で一気にカルメン・ミランダ人気に火がつくのですが、本国ブラジルでは売国奴扱い。何しろ、アルゼンチンなのに舞台はメキシコ風で、ブラジルは一体どこにあるんかいなってことみたいですが、何が幸いするか分りません。本人は随分悩んだみたいです。歌っている姿が誰かに似てるなあ、と思っていたのですが、途中で江利ちえみに似ていることに気付きました。実はカルメン・ミランダはお酒(ドラック?)で46歳で急死しています。江利ちえみが泉下の人となったのが45歳。不幸の連続だったことも共通してますし、不思議なシンクロニシティです。どうでも良い話ですが、ベット・ミドラーがNYのコンチネンタルバスで大受けしたパフォーマンスというのは、誰あろうこのカルメン・ミランダの物真似でして、それがショービズ入りのきっかけですから、カルメン・ミランダ居なければベット・ミドラーも居なかったかも知れません。

♯2“アルゼンチンへの道”

ピアノ・ソロから、ドン・アミチーとベティ・グレイブルのかけあい、そしてベティ・グレイブルのソロ・ダンス。こういっちゃなんですが、どんくさい踊りです。体が重すぎるよ。ドン・アミチーはあの『大逆転』に登場するデューク兄弟の弟の方です。笑うと、なんかキャブ・キャロウェーみたい。

♯3“アルゼンチンへの道”

ニコラス・ブラザーズのチョーチョー有名な踊り。圧巻です。このダンス・ナンバー見るだけでも損はありません。『ザッツ・ダンシング』でも別格扱いでしたしね。しかし、アステアやジーン・ケリーは今でも特別扱いされるのに、この人たちにスポットライトが当たることが殆どないっつうのは如何なもんですかね。TSUTAYAじゃクレジットもされてないし・・・。

♯4“ママ・ヨ・ケーロ”~“Bambu, Bambu”

この何語だか分らない歌(ポルトガル語?)、本当にいいです。カルメン・ミランダの本領発揮ですね。

♯5

シャーロット・グリーンウッドのアルゼンチン・マス・ダンス。おばさん、イイ味出してます。

♯6“Two Dreams Met”

ドン・アミチーとベティ・グレイブルのラブ・ソング。しかし本当にキャブ・キャロウェーに似てるわ。だからなんか笑えちゃうんだよね、いいメロディなのに。

♯7

出演者総顔出しのタイトル・ナンバーのフィナーレ。ラストのお祝いパーティもエンド・カットの二人のアップも定番です。東宝が真似るのも分ります。


やっぱり、ミュージカルはこうじゃなきゃ!
東京キネマ

東京キネマ