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ゲティ家の身代金の東京キネマのレビュー・感想・評価

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)
4.0
面白いです。「欲ボケ爺いは、孫が誘拐されても狂言だと思う」ってだけの話なのに、ヤッパリ凄いですね、リドリー・スコットは。撮影当時80歳ですよ。それにクリストファー・プラマーの演技も素晴らしい。こっちは87歳。 本物の人達ってのは、全く退化しないどころか進化し続けてます。頭が下がりますよ。(残念ながら泉下の人となってしまいましたが。。。)

最初、企画はナタリー・ポートマンとケヴィン・スペイシーで進んでいたらしいんですが、ナタリー・ポートマンは交渉中に断られ、ケヴィン・スペイシーは全て撮影した後、例のオカマ・セクハラで問題になって、急遽、クリストファー・プラマーに替えて全シーンを10日間で撮り直したとあります。ちょっとこれ、10日間で撮影できる量じゃありません。集中力と体力もハンパないですね。キャスティングに関しては、全然こっちの方が良いですね。興行はケタが違ってたでしょうが、出来上がりはこっちが正解でしょう。クドくないのが良いんですよ、サラッとしてて。。。(笑)

リドリー・スコットのいつもの通り、映像もプロダクション・デザインも一点のスキもなく完璧なんですが、だからこそ作為が入り込む余地がないような雰囲気になっちゃって、作品中に出てくる「自宅から客がかける電話代が高いので自宅に公衆電話を置いた」だの、「ホテルのクリーニング・サービスが高いので自分で洗濯した」だの、「孫の身代金で節税した」だの、なんか作為感がバレバレだなあ、と思ったんですが、これ全部実話なのです。なので、「講釈師見てきたような嘘をつき」が本意の映画が、本当が嘘のように見えて、ということは、本当のように見えているものは嘘なのか、という迷宮に入っちゃったりして、とこれまたいつも通りのリドリー・スコットなのです。なので、サスペンスとして見ちゃうと残念な映画になっちゃうのです。

それにしても、最近のハリウッドはパンダハガーやらリベラルやらの拝金主義者ばかりになっちゃって、胸糞悪くなることもしばしばありますが、こういった本物の人達がまだまだ頑張っているんで、アメリカ映画の未来も多少は希望が見えてきた感じです。。。
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