東京キネマ

ビハインド・エネミーライン 女たちの戦場の東京キネマのレビュー・感想・評価

4.0
最近、ますます映画のタイトル(特に洋画)とイントロダクションが出鱈目過ぎて、むしろ、全く逆の解釈をしながらYouTubeでオリジナルのトレーラーを見ながら妄想して、そこで判断するようにしています。この方が結構打率は良いのです。この映画も、正にそうでした。まあ、なので、レヴューも酷い評価のものばかり。おそらく、安手のスリラー映画かサスペンス映画と勘違いして見たのではなかろうかと推察しますが(レヴューで突っ込みたいだけで見るってのも健全な映画鑑賞ですけど・・・)、それにまた、日本の文部省教育やマスゴミのせいでウクライナが一体どういう歴史を辿ってきた国なのかなんてのは歪みに歪んじゃっているもんで、この映画のバックグランドも理解出来ず、従って、如何に恐ろしい状況における民族浄化なのかも、最後の最後まで分からなかったのではないかと思われます。

まず、ウクライナと言えば1932〜33年にかけてホロドモール(強制餓死政策)がありました。「ヨーロッパのパン籠」と言われるほどの肥沃な穀倉地帯だったにもかかわらず、餓死者は1000万人以上、国民の5人に1人が死んだと言われております。この映画に描かれる事件は1941年。バルバロッサ作戦が実行された年です。ナチスはユダヤ人だけでなく、ロシア人含むスラブ系も絶滅対象民族でした。ロシアのスラブ系とはヨーロッパではウクライナ人のことです。また、奇襲作戦を起こされたソ連にとっては、民族意識の高いウクライナ人の中に黒海ドイツ人(ウクライナのドイツ系移民)が多数含まれており、挟撃されないため、という理由で、これまたソ連からも国外追放になるのです。つまり、当時のウクライナ人は東に行けば赤軍に殺され、西に行けばナチスに殺され、止まっていれば両軍に殺される、そんな状況な訳です。なので、「女子供だけでドイツ兵と戦うにはもっと作戦を練らないとね」とか、「そんなやり方じゃあ、死ぬだけじゃん、もっと頭使おうね」とかは、あまりにも認識不足と言うしかありません。そんな状況で、過剰サービスでサイコに火が付いたナチの少尉が村のウクライナ人女性を殺し、それをたまたま目撃した女性が殺されると思い、過剰防衛でその少尉を殺したら、どれほどの恐怖がその女性に降りかかるのか。。

つまり、この映画、後悔しない死に方コンテストの映画なのですよ。 凄い話じゃありませんか。それもクリミア併合の2年後に撮っているんですよ。私、これはヨーロッパ人による史上まれにみる不作為のアメリカ大統領、オバマへの怨念の映画だなあと思って観てました。。。
東京キネマ

東京キネマ