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モンティ・パイソン/人生狂騒曲のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

イギリスを代表するコメディ集団「モンティ・パイソン」の劇場版映画の第4作。
「人生の意味とは何か?」という壮大なテーマを人間の誕生から死までの各場面を7本のスケッチ(コント)で構成。
高尚なタイトルに惹かれて初鑑賞したが、エロ・グロ・ナンセンスたっぷりで呆気に取られる始末。
日本未公開作なのも納得での怪作である。

「空飛ぶモンティ・パイソン」のTV再放送などでパイソンはブラックユーモアで文化や世相を斬るコメディ集団と認識していたが、本作はお下劣不謹慎極まりない。
ある程度、覚悟はしていたつもりだったが、予想を遥かに超える破壊力に開いた口が塞がらない。
現在では到底TV放送など無理だろう。

スケッチの出来にばらつきはあるものの、パイソン流の「人生の意味」とは何か?に興味を惹きつけられ、飽きはこない。

短編「クリムゾン 老人は荒野をめざす」
最初に「別枠」を流すのが、まずふざけている。
終身雇用の保険会社が経営難に陥り、若手ベンチャーに吸収されて馬車馬のように働かされる老労働者たちが決起!
ビルが巨大な帆船となって船出するのがテリー・ギリアムらしいファンタジー。
海賊となった彼らは巨大な金融ビルを襲い、やがて世界中の金融ビル群を破壊していく。
老人の経験を敬え!若い者にへつらうために働いて来たんじゃない!という風刺が痛快。

オープニングは魚に扮したパイソンズたちがシュール。
人間の一生を客観的に見ましょうということか?
第一章「出産の奇跡」は妊婦より医院長と最新機器のほうが大事な産科医のスケッチ。
出産なんてありふれた自然現象で、それよりも技術革新の方が貴重だというのが皮肉。

「出産の奇跡パート2」は、子沢山な労働者階級の家庭のスケッチ。
仕事をクビになった父親が子沢山で食えないのはローマ・カトリック教会が避妊させないせいだと開き直り、そこから壮大なミュージカルに。
「すべての精子は神聖」という下ネタ丸出しの歌を幼い子どもに歌わせるとは不謹慎きわまりなく、カトリックと避妊を認めるプロテスタントとの下らない張り合いも笑える。

「生長と学習」は思春期の学校でのスケッチ。
ジョン・クリーズ演じる先生の性教育授業が奥さんとの実演に発展する下ネタ全開のやりすぎ授業。
真面目なクリーズに笑いが止まらない。
その後、教師vs生徒のラグビーの試合に。
大人にボコボコにやられる生徒たち。
学校とは社会の理不尽を学ぶ場だと伝えたいらしい。

「互いに闘いあうこと」は戦争を皮肉る連続スケッチ集。
1つ目は兵士が生命を守ることより、贈り物を大事にする姿が可笑しい。
2つ目の行進鍛錬では訓練より家にいた方が良いと兵士が次々と離脱する。
3つ目のアフリカの戦場では、大将は戦闘や部下の生命にはまるで無関心で、士官の脚を食べた虎探しに夢中だ。
オチもなく、映画の折り返し点と宣言し、「サカナを探せ」とは意味不明。

「中年」ではアメリカ人夫婦が「地下牢」というハワイアンレストランを訪れ、哲学的会話をプレゼントされる。
少し人生を考えろと陽気なアメリカ人を馬鹿にしているように見える。

「臓器移植」ではドナーカードを持っているからと生きながら臓器提供を強いられ、肝臓を取られる男のグロ満載のスケッチ。
誰かが死んで誰かの役に立つという矛盾がエリック・アイドルの歌で有耶無耶に誤魔化される。
そして臓器提供会社がベンチャー企業の一つと分かり冒頭の「クリムゾン」の老人が再登場するが、一度見たからと強制退場。

「晩年」はレストランでのスケッチ。
超肥満体のグルメなオッサンがゲロを吐きまくり、最後には食べすぎで破裂してしまう下品なスケッチ。
食べては吐く姿は飽食を皮肉っているが、見ていてとても気持ち悪い。
「晩年B」はそのレストランのウエイターがカメラに向かって「すぐそこだから来て」と言い、延々と誘導して実家を紹介。
「これが僕にとっての人生の意味だ」と言うが、面白く思ってないと気づき、彼は怒って歩き去る。
唯一の正論すらギャグにしてしまう捻くれぶりだ。

「死」は「自分で死に方を決められる」死刑囚の死刑執行と、死神に天国に連れ去られる人々のスケッチ。
トップレスの美女の大群に追われて、崖の端から落ちる死刑囚の男に爆笑。
ゲイにとってとても屈辱的な死刑ということか。
田舎のディナー・パーティーに突然現れた死神を誰も認めようとしないが、汚染されたサーモンで全員が死亡。
彼らの魂は死神に連れられて天国に到着。
ラスベガスのホテルのような陳腐な場所が天国とは。
「エンディング」では人生の意味が書かれた手紙が投げやりに読まれて終わる。

とても下品で不謹慎、表現はかなりダイレクトでエログロなのが難点だが、実は教養と批判精神が感じられるのがパイソン節。
世の欺瞞や矛盾への警告めいた姿勢が感じられる。
権力や上品なんかクソくらえという労働者階級のパンクで破天荒なパワーが満載。
「結局、人間なんて、食って、セックスして、争いを続けるだけのサイテーの動物。
人生の意味なんて考えるだけ無駄!」…と言われている気がしてならない。
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