円柱野郎

八甲田山の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

八甲田山(1977年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ロシアとの戦闘に備え、青森の補給路開削と寒冷地装備研究のため、真冬の八甲田山を行軍することとなった青森5連隊と弘前第31連隊。
その明治35年に起きた八甲田雪中行軍遭難事件を、新田次郎の小説を元に映画化したドラマ。

青森5連隊の神田大尉に北大路欣也、弘前第31連隊の徳島大尉に高倉健、その他豪華出演陣まさに東宝のオールスター映画といった様相ですね。
橋本忍の脚本は、序盤こそ分かりやすく状況を説明して、行軍が始まるところまでスラスラと観ている方を引っ張っていってくれるのだけど、いざ行軍が始まるとそれぞれ別方向から進む5連隊と31連隊の状況を交互に描写することが多くなりだんだん淡泊に。
これは脚本じゃなくて編集のセンスのせいか…?

5連隊の指揮は神田大尉が取るはずなのに随行する山田少佐がしゃしゃり出て、地元の案内人は付けない、道に迷って目的地をコロコロ変えるなどの指揮の不備から、悲劇の遭難に突き進む。
対して31連隊は小隊規模の少数精鋭で、明確な指揮、地元案内人の利用など、5連隊と対照的な行動によって見事に八甲田踏破を果たす。
この話の対比こそ映画演出のキモであるのだけど、この辺は話の展開として分かりやすい構造にしようという意図が分かる。
だけどあっちこっちに場面が移動するのは個人的にはちょっと。

神田大尉と徳島大尉の友情めいた部分や、両隊に分かれた兄弟の悲劇、生き残った村山伍長のエピソードなど、色々やりたかったのかもしれないけど、もっと5連隊の極限状況に偏っても良かった気がするかな。
まあそれでも、メンツやら対抗意識やらで状況を引っかき回す無能な上司に苦労する部下、というステレオタイプな組織モノの話としては共感しやすかったですわ。

撮影は実際の真冬の八甲田山で撮影したそうで、地吹雪や雪崩(人工)の場面は大変な撮影だったろうと思う。
スタジオ撮影では出ない雰囲気が出てはいるし、当地の壮大な景色も良いし、苦労分の効果はあったんじゃないかと思います。
大仰な劇判は、すこし使いすぎた気もしたけどね。
円柱野郎

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