ドント

八甲田山のドントのレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
4.1
1977年。うわぁ…………………… 明治35年、来るべきロシアとの戦争に向け、青森は八甲田山の雪中進軍訓練を任された2人の男。弘前側と青森側から踏破を目指した2つの部隊の、あまりに対照的な運命を描く実録デスマーチ(死の行進)映画。
上にきちっと文句を言い極力万全の態勢で臨む弘前隊に対し、「忍従」「弘前隊に負けたくない」「山を舐めまくり」「総勢210人で進軍」「大量の荷物」「案内人? いらん!」と順調に破滅の種を蒔いていき、「リーダーより位の偉い人がいて指揮系統混乱」「思いつきのような方向転換」「メシが凍る」「判断ミス」「天候不良」「迷う」などあらゆる間違いと不運が炸裂する青森隊。まさに日本組織の縮図である。
真っ白で冷たい地獄の中、頭や肩に積もる雪に反比例してどんどん姿が黒くなっていき、そのうち棒が倒れるようにぱたり、ぱたりと死んでいく兵士たち。このコントラスト、乾いた描写がおそろしくも素晴らしい。そのど真ん中でものすごい表情になっていく北大路欣也の不幸顔は本作のシンボルだ。
高倉健率いる弘前隊の描写も多いためいささか長く感じるが、やはり高倉健という男は生き残らねばならぬのである。序盤こそ説明だらけだがデスマーチ開始後は余計な台詞がないのがまたよい。この地獄は見ればわかる。ある意味日本人全員必見の映画。
ちなみに弘前隊も、本当は案内人を途中で放置して死者や負傷者も出ているいうこと。あとオカルトめいた終盤の展開だが、実は「弘前隊が山の吹雪の中不思議な集団の影を目撃した」という記録(出典は失念)があることを書き添えておきたい。
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