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黒い十人の女のtjZeroのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
4.6
まず、タイトルがいいですね。「おお、なんだナンダ?」と興味をひかれる。

中味も負けてません。実際、フランソワ・オゾンの『8人の女たち』よりもスゴい。

女の出入りが激しいTVプロデューサーを、その妻と九人の愛人が共同して殺そうと企む…。

主演の船越英二(英一郎氏のお父さんです)がジェームズ・ボンドも真っ青のプレイボーイを好演。
本来ならとんでもない男のはずなんだけど、憎めず、こっけいで、あわれで、観客がどんどん同情しちゃうんだけど、それでも色気があってカッコいい…という抜群の存在感。

彼をめぐって、山本富士子、岸惠子、中村玉緒、岸田今日子…といった当時の名花たちが、あでやかに、かわいらしく、そして毒々しく咲き誇ります。

夫を評した富士子サンが「誰にでも優しいってことは、誰にでも優しくないってことよ」って台詞を吐く場面のように、思わず吹き出しちゃうシーンが多数。

十人の女たちの黒いシルエット、市川崑監督のスタイリッシュな映像美、ブラックな笑い…と白黒作品ならではの醍醐味がたっぷり。黒水晶を付けた黒猫みたいに妖しく光る逸品。
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