ミッキン

どついたるねんのミッキンのレビュー・感想・評価

どついたるねん(1989年製作の映画)
4.3
今では「アリさんマーク」の優しいオッチャン的ポジションだが、「浪速のロッキー」現役時代を知る者として赤井英和と言えば制御不能な危険男のイメージが未だ離れない。それ故に「どついたるねん」という映画は彼のモキュメンタリーだと勘違いした時期もあった。大和武士相手の迫力あるボクシングシーン。とても演技とは思えない堂々たる台詞回し。俳優デビュー作とは思えないほど原田芳雄とも堂々と渡り合っている。引き締まった肉体と凛々しい面構え(デビュー当時の尾崎豊にも少し似ている)。こんな逸材を発掘した阪本順治監督も凄い。

脚本もよく出来ている。華々しいスポットライトに未練を感じ、自分の理想象をジム生に押し付けるシーン。選手のスタイルに合わせて的確にコーチングする左島と対象的な描き方だ。
安達からクビを言い渡され、明るいナショナルジムを去りゆく時に呟いた「いい夢見させてもらった」という言葉。やがてクロスオーバーする幼き頃の二人。かつて少年期に公園で彼から教えられた事がラストシーンへと繋がっている。実に余韻があって良い。

低予算と言う割に出演者は豪華だ。ビー玉のお京で人気だった相良春子(この頃は可愛かった)やベテラン麿赤児。美川憲一の無駄遣い(演技が下手なのが残念)。ちょい役でハイヒールモモコや升毅の若い頃が見れるのも楽しい。渡辺二郎もこの頃はスターの残り香があったな。今では…。

80年代末期の飛田新地や新世界の街並みも懐かしく見れた。