劇場版『ポケットモンスター』シリーズ3作目
サトシたちは美しい高原の街グリーンフィールドの大きな館で寂しく暮らす少女ミィと出会う。ミィが行方不明となった父親の残した奇妙な文字のカードを並び替えたことで、謎のポケモン・アンノーンが出現する。その直後にグリーンフィールド全体が結晶に覆われ、アンノーンによって具現化されたエンテイが現れ、母親が欲しいというミィの願いを叶えるべく、エンテイがサトシのママを連れ去ってしまう。果たしてサトシはママを救出し、ミィの心の寂しさを解き放ち、街を元に戻すことができるかという物語。
今作は「親子愛」と「孤独」がテーマで、種族間を超えた少女ミィとアンノーンによって具現化されたエンテイが父子の関係として描かれる。謎のポケモン・アンノーンを中心に物語が展開されていく。
父が行方不明になり、父親代わりになったエンテイはミィのために欲する物全てを与えるという寛容さ。元々父の仕事が忙しく常に強い孤独を感じていたミィは、アンノーンによって創られた世界で寂しさを紛らわせていた。
ミィが創り出した世界でサトシのママを母親として迎えたり、子どもから素敵な女性へと変身して、やってみたかったポケモンバトルをするなど様々な経験をして少しずつ心が満たされていく。
中身は子どもなのに女性として扱うタケシの紳士ぶりや、ジムリーダーにもなれるという希望を与えるカスミたちのポケモンバトルの粋な対応が親切で素敵なものだった。
ピンチに現れるサトシのリザードンや、サトシが落ちそうになった時にタケシやカスミと協力して助けるロケット団トリオは敵ながらアッパレな対応で好感度爆上がりだった。とっさに手が出たという言葉はカッコよすぎ!
アンノーンの存在が最後まで謎すぎてずっと不気味。さらにCG映像が相まってさらに不気味さが表現されていた。
今作の最大の凄みは悪役が誰も登場しないということ。あくまでも寂しい少女の心をみんなで満たしていくというのが良かった。ラストもほっこりする終わり方。ロケット団の「やな感じ〜」で終わるラストが好きすぎる。
珍しく伝説ポケモンが一切出ないというレアな作品。人間は孤独を好んでも、孤独には耐えられない生き物なんだなとしみじみ実感した。