ひどいヴィデオジャケットとなんだかなあな邦題、おまけに原題はマックス・フォン・シドーの名作と同じもので、こりゃだめだとケースを棚に戻しかけたところで、キャストの豪華さに気づいて命拾いした。エリオット・グールド、アレン・ガーフィールド、マイケル・J・ポラード、リチャード・ラウンドトゥリー。そして紅一点シャノン・トゥイード。誰かって?81年のプレイメイトだ。そして今ではジーン・シモンズ夫人だ。悪魔崇拝の映画にはぴったりのキャスティングじゃないか?でもその誰もが主役ではない。主人公は性的好奇心の旺盛な郊外に住む少年で、だから隣に越してきたシャノン・トゥイードを、ほうらこれで星を眺めると楽しいぞ、と亡き父親からプレゼントされた望遠鏡で覗き始める。すると彼女は売春婦だったのだ。しかし仲間に話してもまったく信じてもらえない。なぜかって?それは少年が生粋のホラ吹きだったからだ。そんなわけで最初のタイトルは『Never Cry Devil』って、どう考えても現行のものよりも数倍かっこいいものだった。なんで変えたんだろう?バカか?とか思っている間に少年は隣家の屋根に上った。行為の最中を写真に収めて信じてもらおうとしたのだ。だが彼女はいいことをしているどころか殺されている真っ最中だった。悪魔崇拝者に!というこの映画はまったくもって『フライトナイト』そっくりなんだけど、たぶんそれは監督のルパート・ヒッツィグの狙い通りのことだった。彼は皮肉なキャンプ・コメディを撮っているつもりだったが、脚本家のランドル・ヴィスコヴィッチはそんなものを書いた覚えがなかった。完成した映画を観てヴィスコヴィッチは、せっかくハードコアでヌードが満載の過激なホラー映画の脚本を書いたのに、すっかり骨抜きにされたとブチ切れている。そういうあたりの絶妙なバランスの悪さがこの映画の魅力だ。ラストは80Sらしくミュージック・ヴィデオ風に爽快に終わる。「そんなカットはもらっていない」と編集したグレン・エリクソンは首を傾げて言っている。どうやらヒッツィグが勝手に付け足したみたいだ。個人プレーがすぎる彼は、『グライド・イン・ブルー』や『ウルフェン』、『ジョーズ3-D』なんかの製作者でもある。