クルードス

アルマジロ アフガン戦争最前線基地のクルードスのレビュー・感想・評価

3.5
デンマークの若い兵士達がアフガニスタンへの駐留が決まってから、前線基地アルマジロでの6ヶ月の任務を終えて帰国するまでのドキュメンタリー。

フェイクドキュメンタリーかと思って観ていたので、終わった後に本当のドキュメンタリーと知ってビックリ。
映画としてしっかりとした流れがあったので、本当の事だとは思わなかった。

全てが兵士の目線で描かれている。
最初はまだまだ幼く見える兵士と、その家族との別れ。
そして現地到着後、初めての村へのパトロール任務。
村人とも少し交流するが、村人達は村を破壊する軍人の事をよく思ってはいない。

パトロール任務にも慣れていき、退屈と感じるようになっていく最中、突然起こる戦闘。
その後も小規模な戦闘を繰り返しているうちに、恐怖心もあり兵士は村人へ対しても少しずつ不信感が出てくる。

そんな中、地雷でやられて大怪我を負う仲間がでる。
そして、別の地域ではデンマーク兵が地雷で3人死亡する。

兵士達の言動も仲間がやられた怒りでタリバンの事を人間扱いしなくなってくる。
タリバン兵の事「匹」で数えたり、野良犬を殺す方がよっぽど罪の意識に苛まれると言ったり。

そんな中、大規模な戦闘が始まる。
結果、彼らは勝利するが、そこで取る彼らの行いは、相手を全く人間扱いしていない。
でもこの映画が秀逸なのは、ずっと兵士達と同じ目線で観てきたので、彼らがそういう行動を取るのも理解できてしまうという事。

恐怖の中、命懸けで戦って勝てばハイになって皆はしゃぐ。
そこで共有されている感情はその人達だけのもので、仲間意識そのものだ。
でも、それは一歩間違えて暴走してしまえば集団ヒステリーになって、市民虐殺等の悲惨な事件にも繋がっていく。

だからこそ、戦争にはルールがある。

この武器は人に向けてはいけません。
市民を殺してはいけません。
でも相手の兵士は殺してもオッケーです。

そもそもこれっておかしくない?

結局、戦争自体が大きな欺瞞としか思えない。

その他にも「こんな事まで映画で公開するのをよく許可したなー」と思える事もいくつかある。

観客に考えさせる作りになっており、なかなか良く出来た佳作だった。