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GANTZ:Oのkuuのレビュー・感想・評価

GANTZ:O(2016年製作の映画)
3.6
『GANTZ:O』
映倫区分 PG12
製作年 2016年。上映時間 96分。
死んだはずの人間と謎の星人の壮絶な戦いを描いた奥浩哉の大ヒットコミック『GANTZ』をフル3DCGでアニメーション映画化。
原作の中でも特に人気の高い『大阪篇』を基に、東京と大阪のガンツチームが妖怪軍団と激しいバトルを繰り広げる。
『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』のさとうけいいちが総監督、『APPLESEED』のCGディレクター・川村泰が監督を務め、『ONE PIECE FILM GOLD』の黒岩勉が脚本を手がけた。
タイトルの "O "は大阪のことで、原作漫画の "大阪編 "をベースにしているそうな。

地下鉄で事件に巻き込まれて命を落とした高校生の加藤勝は、次の瞬間、見知らぬマンションの一室にいた。
そこでガンツの東京チームと出会った加藤は、彼らとともに大阪の街へ転送される。
曲者ぞろいの大阪チームとの遭遇や妖怪型星人軍団との戦闘など様々な事態に翻弄されながらも、生き延びるべく奔走する加藤だったが……。

『GANTZ』は、奥浩哉が2000年から2013年にかけて原作・作画を担当した全37巻の漫画シリーズで、全世界での累計発行部数は2,000万部を超える。
性的なニュアンスとサディスティックでグロテスクな美学に加え、社会学的、心理学的、人類学的にモラルを問う深いテーマが特徴で、これまでに作られた青年漫画の中で最も物議を醸した作品のひとつとされている。
2004年にはスタジオ・GONZOによって全26話のアニメシリーズが製作され、2011年にはデジタル・フロンティア(本作の製作会社でもある)によって3本の実写映画が製作された。
しかし、漫画の予備知識がなくても、最新作『GANTZ: O』は、死体と弾丸スタントにまみれた、緊迫した展開と悪くないホラー・アクション映画と云える。
しかし、原作の様々なアークを知る者にとっては、この作品は圧倒されるかもしれない。

平凡な17歳の若者、加藤勝が、弟の誕生日のために仕事から帰る途中、地下鉄の駅でナイフを振り回すサイコ野郎に惨殺される。
しかし彼は死ぬどころか、目を覚ますと見知らぬ空っぽの部屋にいて、そこには数人の人間とGANTZという名の大きな球形のコンピューターがいた。
頭を吹っ飛ばされた男を見てパニックになった加藤は、他の仲間たちとともに、大阪で敵対するモンスターの大群と時間制限のあるゲームで戦うことを余儀なくされる。
加藤が100点を取ると、ゲームから抜けることができるが、今回死んでしまうと、それは永遠に続くことになる。

何よりも、『GANTZ:O』のアニメーションとプロダクション・デザインは個人的には良かった。増え続ける3DCGアニメについて多くの議論が交わされてきたが、そのほとんどは、ぎこちないと考えられてきた。
しかし、今回はそれとは違った。 
3Dアニメーションを駆使することで、物事に狂いやゆがみを与えていたが、ここでは結構リアルやった。
照明デザイン、キャラ・モデルのアニメーション、実際にアクションに関わる環境、さまざまな撮影操作に払われた強烈なディテールは、三池崇史監督や深作欣二監督のような巨匠に期待できるものだが、川村泰司監督や齊藤慶一監督にはないものかな。
園村健介が手掛けたアクション・シーンは、手に汗握るもので、崇高な運動力学的雰囲気を持っていた。
足音や銃声のひとつひとつに重みがあり、それぞれのアクションの結果が正当化されているように感じられもした。
街のど真ん中で繰り広げられる『パシフィック・リム』風の巨大ロボット対怪獣の戦いも巧みかな。
表現力豊かな人間やエイリアンのデザインは、ほぼ漫画からの丸写しで、エイリアンたちは実に個性的で(なかには気色悪いほど)、全体的に効果的でした。
しかし、エイリアン生命体というよりは、『ダーク・クリスタル』や『サイレントヒル』をハイブリッドしたような奇抜さを感じる。
短いロマンスシーンがあるが、ほとんど描かれておらず、それゆえ、できるだけ中途半端な感情的ショックを与えるために、別の陰惨な死を位置づけるだけで、映画には何の貢献もしていない。 しかし、最も特筆すべきは、漫画やアニメシリーズで反響を呼んだ社会や文化に対する批評が、黒岩勉の脚本では多かれ少なかれ放棄されていること。
その結果、オリジナルの日本人キャストによる素晴らしいボイスワークにもかかわらず、ほとんどが忘れ去られた一本調子の個性になってしまってた。
戦いはその場その場では大きな意味を持つように見えるが、結局のところ、それほど悲惨だとは感じられない。
たった96分の映画とは対照的に、原作を含む他の作品にはテーマを練り上げるためにどれだけ余分な時間があったかを考えても、このような映画に偏見を抱く気持ちは理解できる。
単体の作品としては、このジャンルのファンなら誰でもリストに入れるべきアクション映画製作の素晴らしい例と云えるんじゃないかな。
映画化作品としては、『ガンツ:O』は木を見て森を見ずといった中途半端なものなのは確かやけど。
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