滝和也

イングロリアス・バスターズの滝和也のレビュー・感想・評価

3.9
タランティーノが
語る戦争サスペンス!

久々タランティーノです(^^)相変わらず楽しい。巧い。映画愛に満ち溢れてる。

クリストフ・ヴァルツが実は苦手。先に007スペクターを見てるんで、スペクターの首魁を矮小化した男のイメージなんですね。さてどうなることかと見始めたら、これは似合う、巧さが引き立つ。なるほどトップは似合わない小物感、嫌らしさ全開のキャラには合う。タランティーノの濃いキャラ設定がまさにピタリとはまってる(^^)

彼演じるユダヤハンターの異名を持つランダ大佐を狂言回しとし、ブラピ演じるアルド"アパッチ"中尉率いるナチ暗殺部隊イングロリアス・バスターズと家族を奪われたユダヤ人女性、ショシャーナの物語が交錯する戦争サスペンス。

古くは「ナバロンの要塞」や「鷲は舞い降りた」などの戦争サスペンスものをモチーフにタランティーノ節が見事に融合した作品ですね。このタイプの活劇は過去量産された時期もあったのですが、最近は余り作られていない。戦争を賛美するような…と言う風潮、特にプラトーンなどの真面目な戦争批判ものがいつしか主流に。(ベトナム戦争以降かな) 敢えてそれを持ってくる辺りがタランティーノでしょう。このタイプの作品はエンタメ部分が強調され、歴史語りとしては意味をなさないので、更に振り切って行く辺り、タランティーノの豪胆さを感じますね。

またタランティーノと言えば会話劇。無駄話かな(^^)、戦争サスペンスにはスパイ的な要素が不可欠なんで、会話劇は実はピタリとハマるんです。勿論そこからのバイオレンス描写への移行たるやタランティーノの得意技。見事な静と動の対比。カタルシスとなってますね。

映画愛に溢れる点を一つ。ヒッチコックに捧げられたオマージュです。フィルムは可燃性で鉄道に持ち込めないと言う説明。このシーンに流用されていたのはヒッチコック英国時代の名作、「サボタージュ」のワンシーンです。こちらの作品も爆弾・映画館と関連しています。間違いなくタランティーノはファンですね、この作品の。興味のある方は是非こちらも。

クリストフ・ヴァルツの繊細かつ矮小さと嫌らしさに相反して豪胆かつ大雑把なブラピの対比と結末が笑えます。また悲劇から始まるヒロイン、メラニー・ロランの美しさも注目です。タランティーノ的戦争映画!堪能させて頂きました!
滝和也

滝和也