もものけ

ブレインダメージのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

ブレインダメージ(1987年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ブライアンは恋人がコンサートに誘いに来ても気分が優れない。
昨夜、横になってから体調を崩したブライアンは、弟に彼女を任せて休んでいた。
しかし、起き上がるとシーツは血にまみれ、後頭部に謎の傷があり、何者かの気配を感じるのだった…。






感想。
ヘンテコ・ホラー映画の鬼才フランク・ヘネンロッター監督が、「バスケット・ケース」に続いて作り上げた珍妙な怪物エルマーが大暴れするカルト・ホラー映画。

コメディ・タッチでバカバカしくありながら、ゴア描写はドギツくアニメーションや二重写しなどを多用して、CGのない時代にVFXを駆使しております。
バカバカしくあるのに、このホラー映画としての残酷性と、古き良き黄金期の音楽が素晴らしい演出となり、非常にB級ホラーながらも良くできた名作といえます。

この「ブレインダメージ」は、珍妙な怪物エルマーに寄生されたブライアンの視点から描かれていますが、その光景はまさにドラッグ中毒患者そのものであるのが面白い構成となっております。
痛点のない脳へ化学物質を投与して、電気パルスによってハイにさせる演出は、そのものズバリ。
そして奇声を上げて振り周り、突拍子もない話を興奮して語る姿は、傍から見ると異常な光景に見えますが、これを怪物に寄生された男のストーリーとした斬新さが素晴らしい。
"これからは光と音楽の素晴らしい世界が待っている"
エルマーの悪魔の囁きに乗ってしまい、そこから抜け出られなくなるブライアンが、アメリカに蔓延るドラッグ問題とリンクしている斬新な視点で描かれています。

1200年代から皇帝や枢機卿の手を経て、様々な人間が奪い合った歴史がエルマーの存在価値を表しています。
そして宿主を薬物中毒にして支配下に置き、一番美味な人間の脳みそを手に入れるようにコントロールする鬼畜めいた寄生虫なのに、妙に知的に語りかけたりしますが、長い人間と過ごした歴史から納得してしまうユーモラスな怪物。

禁断症状に見る悪夢がまたグロくて作り込んでます。
耳から脳髄が取り出されて耳と共に落ち、噴水の様に吹き出す血飛沫といい、強烈なゴア描写。
ユーモラスな演出と、破滅してゆく人間の姿の物悲しさが相まって、メタファーとしてあるドラッグの怖さが伝わるようです。

悪趣味極まりないエログロの下品さなフランク・ヘネンロッター監督ですが「ブレインダメージ」は、割とまとまりがあった作品だと思います。

もはやブライアンは自発的に人を襲う怪物と化してゆきます。
しかし、エルマーを失った刹那に投与された大量の薬物により、なんとブライアンは覚醒して神となるのでした(笑)
投げっぱなし感はありますが、個人的にはエルマーに変わって新たな怪物となるブライアン誕生の物語であったというオチ。
なんともホラー映画っぽいバッドエンドで素敵。

やっぱりホラー映画は音楽も大事なのねと感じさせる名作に、4点を付けさせていただきました!

地下鉄でバトル寸前になるベリアルとエルマー。
まさかの「バスケット・ケース」の友情出演に笑わせていただきました。
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