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ラジオ・フライヤーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ラジオ・フライヤー(1992年製作の映画)
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幼い兄弟マイクとボビーが過ごしたノスタルジックな60年代は、子供だけが持つ魔法の力に満ちていた。賢い忠犬と亀と赤い荷車ラジオ・フライヤー、新しい土地の探検、秘密基地となる小屋、近所の悪ガキ団、丘の上のお願い岩、伝説の飛行士、モンスターにウィジャボード、夢中になった雑誌やTVや映画、恐ろしく哀しい目をしたバッファロー…。やんちゃな2人が駆け回り無邪気に遊び回る日々が、活き活きとたっぷり描写される。
ところが、そこには常に恐怖がつきまとう。ママの再婚相手の顔がよく見えないのは、それが子供時代の忌まわしき記憶だからだ。子供の目の高さに合わせてくれる他の大人とは違う。虐待する継父から弟ボビーを救い出すと誓った兄マイクだが、子供にはどうすることもできない大人の事情。涙する男の顔と孤独なバッファローの目がマイクの中で重なっている。はっきり顔が映る時、その男はもはやモンスターではなくなる。
映画は現在のマイクが自分の子供に語りかけるブックエンド形式だが、最初から最後まで子供の視点を貫いているのが凄い。しかも、大人のマイク演じるのがトム・ハンクスという説得力。物語を語り終えた時、何がどこまで真実か混乱し始める…なのにそこで出る子供の質問ときたら!兄弟は約束を信じ、魔法はいつまでも消えないのだった。
辛い経験をファンタジーに昇華するのはよくあれど、ここまで振り切ったお話はあんまりないと思う。とはいえ、クレジットではちゃんと「今は虐待相談ホットラインがありますよ」と現実の対応を示すのだから感心。
全編を引っ張る子役イライジャ・ウッドとジョセフ・マッゼロの演技というか顔がとにかくいたいけ。監督リチャード・ドナーは「高い所から飛ぶ(落ちる)」演出が本当に得意だなー。
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