ひろ

稲妻のひろのレビュー・感想・評価

稲妻(1952年製作の映画)
4.3
林芙美子の小説「めし」の映画化に続いて、再び林芙美子の作品を、成瀬巳喜男監督が映画化した1952年の日本映画

がめつい長女、お人好しの次女、無能な長男、4度も結婚した母といった家族に囲まれて、フラストレーションがたまるばかりの清子。次女の夫が亡くなり、保険金が入るとなったら、周りの欲望が爆発する。観ているだけで辟易してしまうような人間関係から、自立して生きて行こうとする清子の姿が描かれている。清子の引っ越し先の隣人である性格のよい兄妹の存在が、癒しにもなっているし、悪どい人たちを引き立ててもいる。

清子を演じた高峰秀子が出演した唯一の小津作品である「宗方姉妹」でも、古風な姉と現代的な妹が描かれていたけど、この作品でも、いつも洋服の清子といつも着物の姉を対称的に描いている。どちらの作品でも、現代的な考え方の妹を演じた高峰秀子は、新しい時代のスターらしい魅力がある。専属の映画会社に従わないと干されてしまう時代に、日本初のフリーの役者となった高峰秀子は、偉大なる女優のひとりだろう。

「小津は2人いらない」とか、溝口監督には「キン○マがない映画」なんて言われた成瀬作品だけど、ちゃんと観れば、小津作品と似ているようで、かなり違っている。女性を描かせたら、黒澤明監督とかよりすごいと思う。なんせ、黒澤明が助監督をしていたこともある監督だし、黒澤明が最も尊敬していた監督っていう話もあるぐらい。「めし」や「浮雲」が傑作と言われているけど、個人的には「稲妻」がお薦めだな。
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