てつこてつ

浜辺の女のてつこてつのレビュー・感想・評価

浜辺の女(2006年製作の映画)
3.4
まさに内容に見事にマッチしたタイトル。

ホン・サンス監督作品のこれまでの登場キャラクターの中でも、今回の主人公である“映画監督”の男ほど、軽薄で好色で狡猾な人物は見たことがない。

旅先で後輩の女友だちを寝取り、かと思えば別の女性ともアバンチュールをちゃっかり楽しみ、浮気を疑われると癇癪を起こして逆ギレするという・・。男性目線で見れば、演じたキム・スンウの容貌もあいまって、まあ可愛げがあるというか、滑稽で痛い男だなあくらいで済むのだが、女性視聴者はどう思うのか気になるところ。

ホン・サンス監督ならではのリアルな会話劇・・他の作品群では最後の最後まで他愛のない内容であることもあるのだが、本作に関しては、結構、男女の駆け引きの本質を突いている部分もあって中盤以降の台詞やストーリーの流れ自体も面白い。

浮気を疑われた主人公が、多角形のでたらめな図形で男女の恋愛について説明し誤魔化そうとするシーンは傑作。「自分を跨いで出ていったのか否か」に拘る女性心も、何だかとってもリアル。

一人の男を巡る女性同士が食卓で刺身をつつき合うシーンも面白い。

監督がお気に入りの東海岸ではなく、韓国の西海岸のひなびたリゾート地を舞台にしているのも新鮮で画になる。

個人的に好きな作品だけど、2時間超えさせるほどの内容ではないかな。
ジャケ写が作品内容とかけ離れた爽やかさで、個人的にはツボ。
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