けんたろう

コントラクト・キラーのけんたろうのレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
5.0
英国で酒と女に溺れるおはなし。


ジャン=ピエール・レオを主演に迎えてはいるが、やはりカウリスマキ、さすがカウリスマキ、とでも言うべきか。
主人公アンリは、負け組は負け組、やはり生きるのが超絶怒涛に下手くそなのである。冒頭で見せられる、彼の哀れな姿は可笑しさを孕んでいながらも、実に切ないものだった。

しかし、今作は彼の敗者っぷりをただ見守るだけのものというわけでは決してない。生に懐疑的な殺し屋と生にしがみつく主人公との活劇であり、殺す者と殺される者とのドラマである。そしてそれらによって、生きることの尊さや素晴らしさを見せた快作なのである。

劇中には、神の存在つまり天国や地獄について捻くれた面白い話をする人達が登場していたが、作品を通して見ると、神の存在の有無など生きていれば何方でもよい!!と断じていたように見受けられる。
生やら死やら神やらと、重厚になりがちなテーマさえも軽快に描くカウリスマキが、僕はもう大好きでしようがない。