河

フォーゲルエート城の河のレビュー・感想・評価

フォーゲルエート城(1921年製作の映画)
4.2
夫が聖性を追い求めすぎた故に悪を願うようになった女性がいて、それが極まった瞬間に一番の悪が叶えられて、罪に憑かれた夫婦として生きていくことになる。雨で狩りができず閉じ込められた城で、招かれざる客が訪れたことによって城に不気味さが増す。ただ、それは全てその客によって仕組まれただけのもので、不気味さの元はその夫婦にあったことが最後のネタばらしでわかる形になっている。その後、序盤で妻達が子供と笑顔で遊んでいた湖畔に今は誰もいないっていうショットが挟まれる。序盤でその客が予言した銃砲が1もしくは2だったこともあり、さらに妻は神父が偽物だったのも知らない状態で終わるので、本物の神父の来訪によって妻が自殺するっていう予感を残したラストになっている。

その死の予感や不気味さを反映するように、城のセットは無機質で、空間の広さに対して人が小さく、さらにそれぞれが重々しくゆっくり動くっていうのが基本的なトーンになっている。さらに主要人物達、特に夫婦は追い詰められた時以外はほとんど蝋人形みたいに固まった表情をしている。抑圧された表現主義って感じ。

それに対して、物語の筋と関係なくコミカルな行動をするおじさんと料理長みたいな人の子供がいて、その2人がさらに馬鹿みたいな夢を見てそのまま映画から退場する。その夢のシーンが少し不気味さもありつつもコメディタッチで、やたら浮いていて印象に残るのもあって非常に謎。
中盤までは不気味さが少しずつビルドアップされていく一方で物語がほとんど進まないので、その間この2人が抑揚をつけている感じもするといえばする。晴れの予報の新聞にキスしてドタバタ準備して避けられてる男も借りに誘って、笑顔で窓から顔出しながら真っ先に去って行くおじさん、非常に最高。

見終わってから時間が経つにつれ、じわじわとすごい作品だったのではって気持ちになってきている。
河