唯

娼婦ケティの唯のレビュー・感想・評価

娼婦ケティ(1976年製作の映画)
3.4
こんなに過酷な貧困下でも死を選ぶことなく、人々は懸命に生き延びようとしていたことに驚く。
現代と違って個人などないに等しく、悩む暇などなかったのだろうな。

貧困層の彼らには、情報を知る術がない。
金持ちになる方法や上流階級の人間の考え方など知りようがない。
故に、階級をステップアップさせることなく、殆どの人間が生まれた世界の外に出ることなく命を散らせて行ったはず。

母親が娘に娼婦になることを強要するなど、今となっては考えられないが、当時は当たり前のこととしてあったのだろうなあ。
貧乏人のインモラルっぷりが半端ない。

上流階級の男性が何も知らない貧乏女性に惹かれるのもわかる気がする。
ケティの、何も知らないが故の全てに対する新鮮な感動は見ていて心地好いものである。

健全な友人関係や若者としての時間を経験して行くケティ。
同じ娼婦をしていても、姉はこんな良い思いをしていないことを考えると、女の人生は美醜によって決まることを否定できない。

金持ちが貧乏人に手を出してもそれは99%遊びであって、経済的状況という属性は前提として捨てられるものではない。
だけれど、強く逞しく生きていれば心清らかな相手と出会える、とは易々と言えないのが現実である(だからケティの奇跡的ストーリーが映画になるわけで)。
唯