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魔女のTSのレビュー・感想・評価

魔女(1922年製作の映画)
3.8
【魔術史研究の先駆的作品】80点
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監督:ベンヤミン・クリステンセン
製作国:デンマーク/スウェーデン
ジャンル:ホラー・ドキュメンタリー
収録時間:87分
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ホラーの原点とも言われる魔術史研究のドキュメンタリー映画。当時、ドキュメンタリー映画という分類はなかったため一概にはいえませんが、中世ヨーロッパの魔女問題について再現をし、我々に講義をするような形なので、巨視的に見ればドキュメンタリー映画と言えるのではないでしょうか。サイレント映画且つ魔女と認定された人の異端尋問、悪魔の姿が描かれるためかなり不気味。そして今作は後世の悪魔系ホラー映画に多大な影響を与えた模様。特に『エクソシスト』への影響は大きいようです。

中世ヨーロッパでは黒死病などが蔓延していた時代があり、なにかとつけて人間にとって超自然的なものに対しては魔女のせいであると決めつけたのです。確かにウイルスという目に見えない存在が発見されたのは17世紀末。それまで、風邪を始めとした人間の体調不良というのは一つの大きな謎であったことでしょう。神の悪戯、はたまた悪魔の使いである魔女の仕業、と考えてしまうのも無理はないかもしれません。現代においてはかなりの事象が科学的に証明されているため、その時代で育った我々からすると、根拠をそんな超自然的なものに委ねるというのはおかしな話とも思えてしまいます。

何か災いが起これば、そのたびに魔女のせいにする。いわゆる魔女狩りが15世紀あたりで流行してしまっていたのです。この魔女の容貌ですが、老婆で身だしなみが汚い場合、問答無用でそう判定されたそうです。そして、自分が魔女であるということを、身の毛もよだつ拷問具を使用して白状させるのです。なんという理不尽な話でしょうか。彼女らを魔女として火刑にすることで一体何が変わるのでしょうか。ある意味神に生贄を捧げ、神の怒りをしずめるという儀式的なものも彷彿されてしまいます。超自然的なものに抗う手段としてこのようなことが行われていたのは確かに仕方ない部分もあるかもしれませんが、こんな理不尽な言いがかりで死亡した人間は、200年間でなんと800万人にものぼる模様。末恐ろしき事態です。

今作はそういう中世ヨーロッパの負の歴史を出来る限りリアルに再現したドキュメンタリー映画です。怖くはないかもしれませんがどことなく不気味。やはり、一番怖い生き物は、猛獣でもなく霊でもなく、洗脳された人間なのでしょう。なかなかオススメ。