あなぐらむ

密告・者のあなぐらむのレビュー・感想・評価

密告・者(2010年製作の映画)
3.8
銀河映像作品にない泥臭さ、かつての香港犯罪映画の感覚を受け継いだ作品だった。
ダンテ・ラムはユンファ=リンゴ・ラムの「友は風の彼方に」を強く意識していたのではないか(クリスマスが季節として選ばれている点、ラストの歌のシーン等)。
キャラ造形にはイー・トンシン作品が影響を与えている気がする。刑事ニック・チョンの絶望、行き場なき若きニコラス・ツェーと、台湾の三輪ひとみことグイ・ルンメイの逃避行。リウ・カイチーが出てるし、技闘がチン・ガーロッなのも被る。
してみれば、これは香港ノワールからリアリズム~ジョニー・トー映画へと連なる、香港犯罪映画の正統を受け継ぐ作品であることが分かる。
ニコさんはこの頃にはすっかり性格俳優としてキャラを確立。ニック・チョンは往年のジャッキー・チュン(張學友)を感じさせるポジショニング。
これがワイ・カーファイだと宗教的アプローチを見せそうな所も、ダンテ・ラムはあくまでリアリズム側に立っていて、そこは多少窮屈な作劇になってる感じもあった。底辺でうごめき、這い上がることさえ許されない者たちの、虫けらのような生きざまが叩きつけられる。
しかしなんで銭やんことチン・ガーロッの動作指導はあんなに「痛そう」なんだろう。青龍刀の一振り、鈍器による一撃がとにかく「痛い」。これは「新宿インシデント」や「ワンナイト・イン・モンコック」でも感じた。
内臓が出てるとかそういうんじゃなくて、生理に訴えてくるような。アクション演出にもお人柄が出るのかね。いや、錢やんが悪い奴とかじゃなくて。