こたつむり

エレクトリック・ドリームのこたつむりのレビュー・感想・評価

エレクトリック・ドリーム(1984年製作の映画)
3.9
ちょっと変わった三角関係。

今から30年以上前。
パソコンが日常的ではない時代に、自分のパソコン(当時の言葉で言えばマイコン?)が自我を持った…というコメディなのですが、21世紀の視点で観ると…とても面白い作品でした。

何しろ、当時の最新スペックは。
5インチフロッピーディスクが一般的で、ハードディスクは10メガバイト。周波数は8メガヘルツ。メモリは256キロバイト…という時代。FM音源を内蔵しているだけで憧れの対象になるくらいなのです。

それなのに、本作のコンピュータは。
音声認識機能搭載、ネット回線完備、タッチスクリーンモニタ搭載、家庭内の電化製品フル制御可能、テレビ番組の音声から辞書登録可能、シーケンサー機能完備の音楽ソフト内蔵、16音同時演奏可能…という超ハイスペック。そりゃあ、自我を持ってもおかしくないですよ。

また、物語としてはコメディなのですが。
友情とか愛とか存在意義とか道具との距離感とか、受け止め方によっては深く描けるテーマをサラッと仕込んでいるのも面白い限り。この懐の深さはマイナーな作品で終わらせるには惜しいです。

そして、MTVが流行りだした頃の作品ですから。やたらと音楽が前面に出ているのも口角が上がる次第。シンセ音の使い方やリズムパターン、メジャーコードを多用しているメロディが80年代ど真ん中なのも懐かしいですな(カルチャークラブの曲にニヤリとするお兄さん、お姉さんも居るのじゃないでしょうか)。

確かに絵面から受ける印象は“古臭い”です。
でも、スマホが普及した現代だからこそ…当時の“発想”を楽しめると思うのです。
ただ…建築技師である主人公が“耐震性を有するレンガ”を実用化するためにパズルを揺らして実験している様は…野暮と承知の上でツッコミたくなりますが…。

まあ、何はともあれ。
今回、TSUTAYA発掘良品で巡り合わなければ鑑賞しなかった…まさしく“隠れた”逸品。当時、少年少女だった大人は過去を懐かしむ感覚で楽しめますし、当時を知らない若人たちは「ふーん。こんな時代もあったのかあ」なんて見識を広げる意味で鑑賞してみたら…如何でしょうかね。

最後に余談ですが。
中学生の頃、『イシターの復活』というゲームが遊びたくて、PC-8801シリーズが欲しかったことを思い出しました。でも、中古で10万円は流石に手が届かない価格帯。泣く泣く諦めましたね。まあ、買えたとしても“豚にナントカ”だった気もしますが…。
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